2003 Fiscal Year Annual Research Report
光合成酸素発生複合体マンガンクラスターの振動スペクトル解析
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15770101
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
長谷川 浩司 独立行政法人理化学研究所, 光生物研究チーム, 基礎科学特別研究員 (90312248)
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Keywords | 光合成 / 酸素発生複合体 / マンガンクラスター / 赤外スペクトル / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
植物・シアノバクテリアによる光エネルギーを利用した酸素発生反応は、光化学系II膜蛋白質複合体に存在する4個のMn原子からなるMnクラスターを触媒中心にして行われる。Mnクラスターにはヒスチジンが配位しており、光励起赤外分光差スペクトル法によってヒスチジンのバンドが観測されている。しかしながら、ヒスチジンは2つの窒素部位にMnあるいはプロトンが結合・解離することにより様々な結合形態をとり、Mnは多様な酸化状態を取ることが可能であるため、観測されたヒスチジンバンドがどのようなMnの酸化状態とヒスチジンの結合状態を反映しているか不明である。本年度は、3価あるいは4価のMn原子が結合したヒスチジンのプロトン結合状態、4メチルイミダゾール(4-MeIm)型および5メチルイミダゾール(5-MeIm)型について、密度汎関数法による基準振動解析を行い次の結果を得た。(1)1100cm^<-1>付近のCN伸縮振動はMnが3価から4価に変化したとき、4-MeIm型では約10cm^<-1>高波数側にシフトし、5-MeIm型では約15cm^<-1>低波数側にシフトした。(2)1600cm^<-1>付近のCC伸縮振動は、Mnが3価から4価に変化すると、4-MeIm型あるいは5-MeIm型でともに約3cm^<-1>高波数シフトした。これらの結果は、CN伸縮振動バンドはMnの酸化に対して大きく影響し、CC伸縮振動バンドはほとんど影響しないことを意味している。光合成系MnクラスターのヒスチジンバンドはCN伸縮振動バンドのみが観測され、非常に強い赤外強度をもつCC伸縮振動バンドの変化は観測されていない。密度汎関数法による計算は、観測されたヒスチジンバンドはMnクラスターのMnの酸化による変化を反映し、ヒスチジンの結合状態は変化していないことを示している。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Koji Hasegawa, Yukihiro Kimura, Taka-aki Ono: "Oxidation of Mn cluster induces structure changes of NO_3^- functionally bound to Cl^- site in oxygen evolving complex of photosystem II"Biophysical Journal. 86. 1042 (2004)