2003 Fiscal Year Annual Research Report
癌抑制遺伝子産物Tobによる細胞増殖制御機構と細胞の癌化・老化機構の解析
Project/Area Number |
15770123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 亨 東京大学, 医科学研究所, 助手 (50334280)
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Keywords | Tob / 細胞周期 / リン酸化 / 増殖抑制 |
Research Abstract |
Tobは増殖抑制因子であり、その遺伝子欠損個体は高頻度で腫瘍を発症する。これまでの研究により、Tobの増殖抑制活性は主に卿包が静止期を維持することに寄与しており、その活性はMAP kinaseファミリーのErk1/2によるリン酸化で制御されていることを明らかにしてきた。さらに増殖制御における役割を明らかにするためにTobをbaitにしたyeast two-hybrid screeningを行った。Tobのリン酸化状態に応じて相互作用が変化する因子の同定も踏まえて、baitにはTobのリン酸化型変異体、非リン酸化型変異体を利用した。その結果、転写抑制に関わる分子や新規リン酸化酵素など、いくつかの分子が相互作用分子の候補として同定され、細胞内の過剰発現の系で実際に相互作用することを明らかにした。今回同定した分子は、リン酸化型Tob、非リン酸化型Tobのどちらとも結合するという結果が得られたが、いずれの分子もTobの増殖制御と関わりが深いと考えられ、さらなる解析していく予定である。 一方、Tobと細胞の癌化の関係を調べるため、野生型、及びtob遺伝子欠損の培養繊維芽細胞において活性化型Rasを発現させたときの影響を解析したが、Rasに誘導される増殖停止に明確な相違は観察されなかった。Rasによる増殖停止は、細胞の癌化抑制に深く関与している。マウス個体の癌化の感受性はその遺伝的背景と密接に関わっており、それは細胞の癌化にもあてはまると思われる。今後は細胞を調製する上で、個体の遺伝的背景を考慮しながら解析する必要があると考えられ、現在その研究計画が進行中である。また、Tobを正常細胞に発現させると老化様の形態を示すが、癌細胞に対しては同様の形態を誘導しないことが分かった。今後、Tob発現により引き起こされる形態変化の分子機構、及び増殖への影響を解析する。
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