2003 Fiscal Year Annual Research Report
薄板スプライン形態解析に基づくナチョラピテクスの骨形状復元
Project/Area Number |
15770158
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荻原 直道 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70324605)
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Keywords | 形態復元 / 薄板スプライン / 変形化石 / 3次元骨形状モデル / 有限要素法 / 自然人類学 |
Research Abstract |
本研究では,変形を受けた化石の合理的な形態復元アルゴリズムを考案し,その手法を用いてナチョラピテクスの化石形状の復元を行うことを目的としている。 本年は,頭蓋骨など左右対称の骨について変形形態の復元手法を開発した。左右対称な骨では,正中矢状面内の特徴点は空間の同一平面上に,その他の左右で対になる特徴点は2点を結ぶ線分が正中矢状面と中点で垂直に交わる位置に必ず存在する。しかし,土圧などにより化石が変形するとそのような幾何学的関係が失われる。このことに着目して客観的な変形復元を行う方法論を考案した。具体的には,化石の3次元表面形状データと解剖学的特徴点の座標を取り込み,特徴点の位置を上述の幾何学的制約を満たすように移動させた。そして元座標から修正座標への非線形写像を薄板スプライン関数によって記述し,それを用いて化石の表面形状全体を変換することにより変形の除去を行った。この手法をすでにナチョラピテクスと同じ中新世の代表的な化石類人猿プロコンスルの頭蓋骨復元に応用し,良好な復元結果を得ている。 一方,対称性が仮定できない骨については,現生霊長類の表面形状リファレンスデータベースとの相互形態差を定量化し,薄板スプラインによりその形態差を種間変異範囲内の変形成分と土圧など外的要因による変形成分に分解し,後者のみを選択的に除去することを考えている。これについては現在プログラムを構築中である。 また,本研究では化石の形態変形シミュレーションを行い,本アルゴリズムを用いてその人工的な変形化石の形態復元することによって妥当性を検証する予定である。そのため本年は,骨のCT画像から3次元有限要素モデルを生成する形状処理システムを構築した。そして本申請の有限要素法ソフトウェアを用いた骨の構造解析の習熟に勤め,形態変形シミュレーションを行う下地を築いた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 荻原直道, 中務真人, 中野良彦, 石田英實: "プロコンスル頭蓋骨の3次元形態モデリング"霊長類研究. 19. 217-227 (2003)
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[Publications] 荻原直道, 山中淳之, 中務真人, 石田英實: "有限要素法を用いた霊長類肩甲骨の機能形態学的解析"霊長類研究. 19. 203-215 (2003)
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[Publications] 中務真人, 荻原直道 (編著): "自然人類学研究 I"金星舎. 141 (2004)