2004 Fiscal Year Annual Research Report
農村地域におけるランドスケープのパターン変化が生物多様性に及ぼす影響
Project/Area Number |
15780030
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
一ノ瀬 友博 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 助教授 (90316042)
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Keywords | 農村地域 / ランドスケープ / パターン変化 / 生物多様性 / 淡路島 / イギリス / ため池 / トンボ類 |
Research Abstract |
今年度は、主にイギリスにおいて調査研究を進めた。イングランド北西部のマージーサイド地域において、土地利用と水辺の生物生息地の変化を農地の集約化と都市の拡大の影響の視点から調査分析を進めた。イングランドの北部は、古くからMarl Pitと呼ばれる水域が非常に高密度に分布してきた。これは、土壌改良材として利用するために泥炭を掘ったあとにできる水域で、イギリス各地に数多く分布していた。しかし、産業革命以降肥料の運搬が容易になり、さらに化学肥料の普及とともに、泥炭堀はなされなくなった。その後、農地の集約化や都市の拡大とともに、多くのMarl Pitが埋め立てられ消滅し、ある地域では、1900年以降にその半数が消滅したともいわれているが、その実態はあまり明らかになっていない。また、近年になって、これらの水域が多くの水生生物にとって貴重な生息地になっていることが知られるようになった。現在は、1900年以降の地形図と第2次世界大戦以降の空中写真を使って、土地利用と水域の変遷を分析している。 その他には、今年度はこれまでに取得したデータを用いて成果を発表した。特に、淡路島北淡町南部で行ったトンボ類の調査分析の結果、小規模ため池に分布するトンボ類の分布が、周辺の水田と森林の面積に影響を受けることが明らかになった。この結果と、対象地の土地利用変化の分析結果とあわせ、生物相の多様性保全と農村地域の土地利用変遷を議論した成果を平成17年5月にスイスで開かれる国際シンポジウムで発表予定である。さらに、トンボ類の分布を規定する要因についてより詳細な分析を行った結果は、平成17年4月に開催される農村計画学会春期大会で発表する。両者の分析から、トンボ類の繁殖の場となる水域が減少しなくても、周辺の土地利用が変化することによって、トンボ類の分布が大きな影響を及ぼされることが明らかとなり、環境のセットの保全が必要であることが示された。
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Research Products
(4 results)