2003 Fiscal Year Annual Research Report
原始的な花粉媒介システムの解明とその応用に関する研究
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15780039
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
塚田 森生 三重大学, 生物資源学部, 助手 (20273352)
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Keywords | 花粉媒介 / バンレイシ科 / チェリモヤ / アテモヤ / 甲虫 / ケシキスイ / 果樹 / 群集 |
Research Abstract |
被子植物の中で比較的原始的な分類群に属する果樹チェリモヤとアテモヤを用い、その訪花昆虫相の解明を進めると共に、いくつかの種の花粉媒介能力を実験的に推定した。さらに、訪花行動の理解の基礎として、花の誘引力を実験的に調べた。 これまでに得た標本も合わせ、マイクロスコープを用いて同定を行った。確認された訪花者は903個体におよび、そのうち302個体がハネカクシ科に属しており、この科の占める割合が最も大きかった。次にケシキスイ科が243個体、ヒメマキムシ科が224個体となった。全部で、44種の節足動物が確認され、その95%以上が昆虫綱コウチュウ目に属していた。 本年度の現地調査は、おもに三重県御浜町および沖緯県名護市で栽培されているアテモヤを対象として行った。これらの場所での優占的な訪花者は、前者ではPhloeonomus属およびAleocbarinae亜科のハネカクシ、後者ではキイロチビヒラタケシキスイであった。これら以外の訪花者は少なく、両調査地とも訪花者の多様性は低かった。また、場所により訪花者群集が大きく異なることは、この植物が特定の昆虫と強固な関係を築いて花粉媒介を行わせるのではなく、日和見的な戦略をとっていることを示唆している。 室内で増殖したモンチビヒラタケシキスイとクリイロデオキスイ(いずれもケシキスイ科)に花粉を付着させた後に、雌ステージの花に網をかけた中に放飼し、種子がいくつ得られるのかを調べたところ、クリイロデオキスイはモンチビヒラタケシキスイと比べて花粉媒介能力が高いことが示唆された。しかし、15匹を放飼した場合でも平均種子数は5個に過ぎず、人工受粉の35個と比べて不十分であることは明らかであった。 T字型およびY字型の簡単な風洞装置を用いてモンチビヒラタケシキスイおよびクリイロデオキスイが花への選好性を持っていることが確かめられたが、いずれの部位に誘引されるのかはサンプル数が少なく有意な結果が得られなかった。
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