2005 Fiscal Year Annual Research Report
原始的な花粉媒介システムの解明とその応用に関する研究
Project/Area Number |
15780039
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
塚田 森生 三重大学, 生物資源学部, 講師 (20273352)
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Keywords | 花粉媒介 / 果樹 / チェリモヤ / アテモヤ / 甲虫 / ケシキスイ / 行動 / 雌性先熟 |
Research Abstract |
被子植物の中で比較的原始的とされるバンレイシ科の果樹アテモヤを材料として、甲虫類を花粉媒介者として利用するための調査・実験を行った。石垣島の農家の畑においてはカタベニデオキスイ、クリイロデオキスイが高密度で訪花していた。しかし、沖縄本島で優占しているキイロチビヒラタケシキスイは見られなかった。一方三重県の畑ではハネカクシ科の二種の甲虫が訪花者の大半を占めていた。これらケシキスイ、ハネカクシは少数の花に集中して訪花する傾向があった。 実際に甲虫の働きを人工受粉のかわりに利用できるか否かを調べるために、網で覆ったアテモヤを用意し、訪花していたクリイロデオキスイおよびカタベニデオキスイを実験室内で増殖したものを網の中に大量放飼した。しかし、いずれの虫の場合も訪花数、結実数ともに少なく、実用化にはまだ解決せねばならない問題がいくつかあると考えられた。特に、大量飼育した虫は花への選好性が低い傾向があり、これが訪花数の低下につながったと考えられる。 一方、大量放飼した虫を含め、花に訪花した虫の行動を長時間ビデオ撮影して明らかにした。その結果、訪花者のうちハネカクシ類は滞在時間が30分から3時間程度と短く、約24時間の雌性先熟を示すアテモヤの花の花粉媒介者として好適な行動をとっていないことが確認された。一方でケシキスイ類は♀ステージの段階で訪花し、♂ステージなってから花を去ることが多く、花粉を運搬するのに適した行動を見せた。さらに、体表の花粉付着率もケシキスイで大きく、ハネカクシでは小さかった。このように、現時点では花粉媒介者としての利用が困難ではあるが、ケシキスイ類にはその潜在的な可能性があると考えられた。
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Research Products
(3 results)