2004 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の性フェロモンカスケードの分子メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
15780043
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大西 敦 独立行政法人理化学研究所, 松本分子昆虫学研究室, 協力研究員 (50342762)
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Keywords | β-D-glucosyl-O-L-tyrosine / ACBP / Bombyx mori |
Research Abstract |
アシル-CoA結合タンパク質(ACBP)は、長鎖脂肪酸アシル-CoAの保護、輸送に関与する低分子タンパク質で、生物種間で広く保存されている。これまでに、我々は、カイコガフェロモン腺からACBP(pgACBP)をクローニングしており、この遺伝子がフェロモン腺内で特異的に発現し、羽化1日前の蛹でその転写量が急激に増加することは既に報告済みである。またフェロモン産生細胞には、油滴状顆粒が数多く存在し、その中には性フェロモン前駆体となるトリアシルグリセロールが豊富に含まれている。以上のことから、pgACBPは、カイコガ性フェロモン(bombykol)生合成に深く関与すると考えられる。本研究では、bombykol生合成メカニズムの上流部分で重要な役割を果たすpgACBPの転写活性化因子の精製、解析を行った。 血清サンプルをHPLCで分離し、pgACBPの転写を誘導する単一ピークを得た。MS、NMR解析の結果、β-D-glucosyl-O-L-tyrosineであることが分かった。昆虫の体液中にβ-D-glucosyl-O-L-tyrosineが存在することは既に報告されているが、その直接的な機能は分かっていなかった。 β-D-glucosyl-O-L-tyrosineは、pgACBPの転写のみを特異的に調節し、他のフェロモン腺特異的遺伝子の転写には関与しない。また、その血中濃度は、羽化4日前から増加し始め、羽化直前まで高い濃度を維持する。この体液中の濃度上昇が、pgACBPの転写量増加の引き金を引く。さらにIn vitroの実験から、β-D-glucosyl-O-L-tyrosineは、直接フェロモン腺内に入り込み、pgACBPの転写量を増加させると考えられる。以上のことから、β-D-glucosyl-O-L-tyrosineは、pgACBPの転写制御に深く関与することが示唆された。
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Research Products
(2 results)