2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15780056
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
会見 忠則 鳥取大学, 農学部, 助教授 (90264928)
|
Keywords | 微生物農薬 / 線虫捕捉菌 / Monacrosporium / Pleurotus / rDNA-ITS / 酸性雨 / pH / きのこ |
Research Abstract |
松枯れの原因であるマツノザイセンチュウに対する微生物農薬を開発するため,マツノザイセンチュウを捕食する微生物を探索した.その結果,不完全菌類に属し,ネット状の捕捉器官による物理的な締め付けで線虫を捕捉するMonacrosporium megalosporumを自然界から分離・同定した.また,保存菌株の中から,担子菌類に属するPleurotus ostreatus(ヒラタケ)をはじめとする26種のヒラタケ属のきのこがマツノザイセンチュウを捕食可能であると分った.そこで,これらの線虫捕食菌が微生物農薬として利用可能であるか検討するため,本年度は,まず,寒天培地上での増殖が速かったM.megalosporumの増殖および生存性に対する温度やpHの影響を調べた.その結果,15℃〜32℃では増殖可能であった.従って,温度の面では日本の気候に十分適応可能であると考えられる.しかし,本菌は酸性側のpHに対し非常に感受性で,pH6〜pH9の培地上で増殖は良好であったが,pH5以下では,極端に増殖能が低下すると同時に,線虫捕食能も低下した.また,本菌のプロトプラストを酸性pHにさらすと細胞膜が破壊されてしまうことも分った.線虫の天敵として自然界において,線虫のバイオコントロールを担っている線虫捕食菌が,酸性pHに感受性であることから,近年,日本国内での松枯れの進行は,酸性雨により樹木が衰弱した結果だけではなく,天敵微生物である線虫捕食菌もダメージを受け,その結果として自然界におけるマツノザイセンチュウのバイオコントロールが機能しなくなったためではないかと推測された.今後,微生物農薬の開発のためには,酸性pHで旺盛に増殖可能なヒラタケ属のきのこ類の利用,特に廃菌床が利用できる食用として栽培されている菌株の中から選抜していくのが適切ではないかと考えられる.
|
Research Products
(1 results)