2003 Fiscal Year Annual Research Report
Candida albicansにおける蛋白質リン酸化を介した形態分化機構の解析
Project/Area Number |
15780064
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
梅山 隆 国立感染症研究所, 生物活性物質部, 研究員 (20360696)
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Keywords | 深在性真菌症 / Candida albicans / 蛋白質リン酸化 / プロテインキナーゼ / プロテインフォスファターゼ |
Research Abstract |
日和見感染菌であり、臓器移植患者等の免疫不全の患者の増加に伴って深刻化している深在性真菌症の主要原因菌であるCandida albicansの病原性を解明するために、本菌のゲノム上にコードされている蛋白質リン酸化に関わる酵素を網羅的に遺伝子破壊することを計画した。平成15年度ではプロテインキナーゼについては一部の遺伝子についてしか破壊の計画が進行しなかった。プロテインフォスファターゼ(CaPPase)については全ての遺伝子の破壊(必須遺伝子は除く)に成功した。29種類のCaPPaseの中で既に報告されている遺伝子、致死的であると推定される遺伝子を除く、全てのCaPPaseについて破壊が成功した。今後、破壊株の増殖や形態変換能等の表現型を中心に網羅的な解析を行う予定である。また、2種類のプロテインキナーゼ及び1種類のプロテインフォスファターゼについて詳細な解析を行った。そのうち一つのプロテインキナーゼCaHsl1pについて解析を行った結果、遺伝子破壊株の形態および病原性に異常があることを見出した。遺伝子破壊株は酵母形誘導条件においては細胞が伸長し、菌糸形誘導条件では伸長速度が速くなる。また、マウス感染実験を行った結果、遺伝子破壊株を接種したマウスの致死率と臓器への定着率が低下したことから、病原性との関連も明らかになった。さらに、申請者が開発した様々なC.albicans用の分子生物学的ツールを用いて、CaHsl1pの蛋白質の局在、発現量の変動、リン酸化状態の変化等について詳細に解析を行った。以上の結果から、C.albicansの形態変換について新たなシグナル伝達経路を見出し、それが病原性とも関連性を持っていることが示唆された。本研究において様々な遺伝子破壊株を作製を行ったが、これから作製する予定の遺伝子破壊株も含めた網羅的遺伝子破壊および表現型の観察によって、新しい抗真菌剤のスクリーニングのターゲット探索への応用が可能であり、深在性真菌症の克服に貢献することが出来るだろう。
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