2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子工学的手法を用いたグース型リゾチームの触媒機構の解明
Project/Area Number |
15780077
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Research Institution | Kyushu Tokai University |
Principal Investigator |
河村 俊介 九州東海大学, 農学部, 講師 (10331076)
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Keywords | リゾチーム / グース型 / 触媒機構 / 活性部位 / 部位特異的変異法 / 溶菌活性 / オリゴマー活性 |
Research Abstract |
グース型リゾチームは細菌の細胞壁多糖類を加水分解する溶菌酵素である.本酵素は同じ溶菌酵素であるニワトリ型リゾチームと類似した立体構造を有するにもかかわらず,その酵素学的性質(基質特異性や反応特異性)が異なっている.グース型リゾチームはニワトリ型リゾチームと比べて研究が極めて遅れており,基質結合様式,基質特異性および触媒機構など殆ど解明されていない.本研究は,ダチョウ卵白由来グース型リゾチーム(OEL)をモデルタンパクとし,遺伝子工学的手法を用いてグース型リゾチームの糖加水分解機構を解明することを目的としたものである.平成15年度においては,まず,OELの活性部位で完全に保存されている3つの酸性アミノ酸(Glu73,Asp86,Asp97)を置換した変異体を酵母の分泌発現系を用いて作製し,活性への影響を解析した.Glu73をGlnとAspに置換した変異体(E73Q, E73D)の溶菌および(GlcNAc)_5に対する活性測定の結果E73Qは完全に活性が消失し,E73Dでは9%にまで大きく活性が低下した.同様にAsp86とAsp97に関する4種の変異体(D86N, D86E, D97N, D97E)についても解析し,D86EとD97Eでは約36%,D86NとD97Nでは約12%に活性が低下した.Glu73,Asp86,Asp97に関するいずれの変異体も,野生型酵素と比較して,CDを用いた主鎖構造,キチンアフィニティーカラムに対する基質結合力および変性剤であるグアニジン塩酸に対する安定性に変化が見られなかった.以上のことから,Glu73はプロトンドナーとして作用するOELの触媒残基であることが明らかとなり,Asp86とAsp97の側鎖のカルボキシル基も触媒反応に重要な役割を果たすアミノ酸であることが推定された.現在,触媒活性を完全に消失した変異体E73Qと(GlcNAc)_6との複合体の結晶化条件を探索中であり、構造面から触媒機構や基質結合様式を検討予定である.
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[Publications] Araki T., Toshima G., Kusao T., Chijiiwa Y., Kawamura S., Torikata T.: "The amino acid sequence of satyr tragopan lysozyme and its activity."Biosci.Biotechnol.Biochem.. 67(12). 2621-2626 (2003)
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[Publications] Kawamura S., Eto M., Imoto T., Ikemizu S., Araki T., Torikata T.: "Functional and structural effects of mutagenic replacement of Asn37 at subsite F on the lysozyme-catalyzed reaction."Biosci.Biotechnol.Biochem.. 68(3). 1-9 (2004)