Research Abstract |
本年度の主たる目的である,幹中,および幹-枝-葉にかけての水分上昇パターンの樹種ごとの類型化について,福岡(九州大学農学部圃場)・熊本(熊本県林業研究指導所)・鹿児島(鹿児島大学農学部圃場)にて,常緑広葉樹(シラカシ,アラカシ,イチイガシ,マテバシイ,スダジイ,タブノキ,ヤブツバキなど)と針葉樹(スギ,ヒノキ,イヌマキ)を中心に酸性フクシン水溶液の樹幹注入による染色試験を行った.その結果,ヒノキの水分上昇式はsectorial straight型のものが多く,他の樹種はほぼinterlock型であることが分かった.しかし,既往の文献に報告のあるspiral型の水分上昇パターンを示す樹種は見いだせなかった.また,スギ,ヒノキでは幹の年輪と葉の染色部位について齢的同調性が認められたが,広葉樹については齢的同調性は認められなかった.この水分上昇パターンの種ごとの類型化については,次年度に落葉広葉樹種を中心として継続する予定にしている. また,樹木の発達の基礎となるシュート(葉+枝)の定量的な調査,およびパイプモデル的な解析をブナ科常緑広葉樹9種と1種のクスノキ科常緑広葉樹について行い,コナラ亜属(コジイ,スダジイ,マテバシイ,シリブカガシ,ウバメガシ)とアカガシ亜属(アラカシ,シラカシ,イチイガシ,ウラジロガシ)といったような分類学的な差異,および葉や枝の基本的な大きさに依存して,同化部と非同化部の量的なバランスや着葉年数などに違いが見受けられることが分かった.この研究の一部は日本林学会九州支部大会(於沖縄)で発表を行った.
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