2005 Fiscal Year Annual Research Report
中部・西日本のツキノワグマ個体群の遺伝的構造の解明と保護管理ユニットの提言
Project/Area Number |
15780119
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
大西 尚樹 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 研究員 (00353615)
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Keywords | ツキノワグマ / 遺伝構成 / 遺伝的交流 / ミトコンドリアDNA / 保護管理ユニット / 集団遺伝学 / 保全遺伝学 / 生理地理学 |
Research Abstract |
中部日本から西日本にかけてのツキノワグマ(Ursus thibetanus)個体群の遺伝構成を明らかにするために、ミトコンドリアDNA(mtDNA)解析を行った。 新潟・長野以西において有害駆除や狩猟によって捕獲された個体の筋肉、または体毛からDNAを抽出した。四国においてはヘアートラップを設置し、それにより回収された体毛からDNAを抽出した。mtDNAコントロール領域約700bpの塩基配列を決定した。 本州西部の4個体群(西中国・東中国・北西近畿・北東近畿)と新潟・長野個体群で観察されるハプロタイプはそれぞれ異なるクレードに属することを昨年度報告した。今年度は、北陸地方や滋賀県・岐阜県のサンプルを加えることで、これらのクレードは琵琶湖を境界としていることが明らかになった。さらに、紀伊半島、四国個体群で観察されるハプロタイプは、琵琶湖以西のクレードとも琵琶湖以東のクレードとも異なる新たな第三のクレードを構成していることがわかった。 各ハプロタイプが観察された地点を地図上にプロットしていくと、非常に広い地域で観察されるハプロタイプと地域的に特有なハプロタイプがあることがわかった。前者は氷河期以降に急激に分布を拡大した際に広がったと考えられ、後者は分布拡大後にその地域で分化されたタイプと考えられる。この地域特異的なタイプが維持されていると言うことは、他地域との遺伝交流が少ないことを示唆していると考えられる。こうした地域特異的なハプロタイプの分布を元にツキノワグマの個体群を定義していき、保護管理ユニットとして割り振っていくことが可能であると考えられる。
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