2003 Fiscal Year Annual Research Report
高温炭化により木材細胞内腔に成長する円錐形炭素物質の生成機構の解明と機能材料化
Project/Area Number |
15780123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 幸恵 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30301120)
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Keywords | 木炭 / 乱層構造炭素 / 円錐構造 / 黒鉛ウイスカー / 電子回折 |
Research Abstract |
木質建築廃材などの処理および機能性の付与の手段として、炭化は有効である。スギ材を2000-3000℃の高温で黒鉛化処理する過程で、細胞内腔に-径数μm、長さ10-100μmの円錐形の炭素物質が堆積することを見い出しており、これまでの研究からこの円錐形の炭素物質は高度な構造規則性を持つこと、その生成には木材の組織構造や成分組成の特徴が不可欠であることが明らかとなった。そこで更に詳細な生成条件の検討と、その特性を応用した機能材料化を計画した。 本年度はこの円錐形の炭素物質の構造と生成機構とを明らかにする目的で研究を実施した。その結果、構造に関しては螺旋円錐状の黒鉛構造を持つことが解り、生成に関しては核になる物質を特定することができた: 構造に関しては透過電子顕微鏡等による解析から、円錐状の炭素六角網平面は閉じることなく隣層へと螺旋状に連なった構造を持つことが解った。円錐の頂角は138°である場合が最も多く、この角度は炭素六角網平面の堆積構造においてはエネルギー的に安定な状態のひとつを与える。円錐状の堆積は黒鉛の堆積規則性と異なる角度での堆積を強いるので、炭素六角網平面間では黒鉛に比べて反発が働き、最安定構造である黒鉛の炭素六角網平面間隔0.335nmより若干大きい炭素六角網平面面間隔を持つ「乱層構造炭素」となり、完全に安定な黒鉛構造を与えないことをよく説明できる。生成機構に関しては、木材のもつ元素のうちの一種が結晶化して核となり、木材細胞壁から発生した熱分解ガス化が原料として供給されるプロセスによることが解った。円錐形の炭素物質は、先端部の円錐において、らせん転移により顔を出した階段に原料一次炭化物の熱分解炭素原子が供給されて成長を続ける、一種のウイスカーと考えられる。
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Research Products
(1 results)