2003 Fiscal Year Annual Research Report
ネマティック配列構造を有するセルロースからの音響デバイスの創製
Project/Area Number |
15780128
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
戸川 英二 独立行政法人森林総合研究所, 成分利用研究領域, 主任研究員 (60343810)
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Keywords | NOC / 音響デバイス / 高次構造 / 力学物性 |
Research Abstract |
本課題では,研究代表者らが開発した新規構造を持つセルロース,ネマティックオーダーセルロース(NOC)の音響用デバイスとしての適性と,NOCの改質による高性能音響デバイス化への可能性を探ることを目的としている。本年度は,NOCの音響デバイスとしての適性を評価するため,NOCの力学(音響)特性およびその高次構造を解析した。NOCの延伸方向に対して平行方向な動的弾性率は16.4GPを示し,普通紙の弾性率の5倍以上の値となった。また内部損失の値は0.05で,内部損失に関しても普通紙より高い値が得られた。以上の結果から,NOCは高性能音響デバイスとしての特性を備えていることが分かった。しかしながら,湿潤(飽水)状態におけるNOCの動的弾性率は,気乾状態での値の10%までに低下することが明らかとなった。一方,剛性率に関して,その値は0.09GPaとなり,弾性率に比較して極端に低い値が得られた。また水分の影響に対して,弾性率と同様の現象が剛性率にも認められ,気乾状態値の5%程度まで低下した。これに対して,水接触角は高い値を示し,NOC表面は疎水性に近いことが推定された。これら従来のセルロース材料には見られない特異的な物性は,NOCの高次構造に起因するものと考えられた。そこで,偏光および原子間力顕微鏡を用いてNOCの形状観察を行なったところ,延伸方向に平行に並んだ組織構造が観察された。この構造が高弾性率・低剛性率を生じさせたと考えられた。またNOCの水による膨潤異方性を検討した結果,横方向(延伸方向に垂直)に大きく水膨潤することが分かった。これはグルコース環が表面に対して,水酸基を平行にして配列していることを示唆している。この配列構造が表面疎水性に寄与しているものと推定された。
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