2004 Fiscal Year Annual Research Report
ネマティック配列構造を有するセルロースからの音響デバイスの創製
Project/Area Number |
15780128
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
戸川 英二 独立行政法人森林総合研究所, 成分利用研究領域, 主任研究員 (60343810)
|
Keywords | セルロース / 音響デバイス / 高次構造 / 二軸延伸 / 分子配向 |
Research Abstract |
本課題では,研究代表者らが開発した新規構造を持つセルロース,ネマティックオーダーセルロース(NOC)の音響用デバイスとしての適性と,さらにはNOCの改質による高性能音響デバイス化への可能性を探ることを目的としている.昨年度までの結果からNOCは極端な力学異方性,延伸方向の弾性率が横方向と比較して極度に高い値,を有していることが明らかとなった.そこで本年度は,このセルロースフィルムの力学異方性を低減させる目的として,セルロースに二軸延伸法を適用し,二軸延伸セルロースフィルムの高次構造特性と力学物性を解析した. 二軸延伸フィルムのX線回折および固体NMRスペクトルはブロードなプロファイルを示し,二軸延伸セルロースも一軸延伸のNOC同様,非結晶性であることがわかった.また3方向X線回折像から,セルロース長鎖軸がフィルム面に対して平行に配向していることが明らかとなった.さらにAFMによるフィルム表面解析から,未延伸フィルムおよびNOCと比較して,二軸延伸セルロースは表面が平滑であることが判明した.以上の結果から,二軸延伸法は,セルロースフィルムを透明な状態のまま結晶化させずに分子配向状態を変化させることが可能で,加えて,表面粗さを改質することができることを示した. 一方,力学物性において二軸延伸セルロースフィルムは,縦(延伸方向)と横方向に関して同等の弾性率・引張り強度ならびに伸び値を示し,力学物性のバランスを有した力学等方的なフィルムであることが明らかとなった.以上のように,二軸延伸法はセルロースフィルムの構造および力学物性の改質に対して非常に有効であることがわかった.
|