2005 Fiscal Year Annual Research Report
ネマティック配列構造を有するセルロースからの音響デバイスの創製
Project/Area Number |
15780128
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
戸川 英二 独立行政法人森林総合研究所, 成分利用研究領域, 主任研究官 (60343810)
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Keywords | セルロース / 音響デバイス / 高次構造 / 分子配向 / ネマティック配列構造 |
Research Abstract |
本課題では、研究代表者らが開発したネマティック配列構造を持つセルロース、ネマティックオーダーセルロース(NOC)の音響用デバイスとしての適性と、さらにはNOCの改質による高性能音響デバイス化への可能性を探ることを目的としている。昨年度までの結果から、NOCは極端な力学異方性、つまり延伸方向の弾性率が横方向の弾性率と比較して極度に高い値を有していることが明らかとなった。また、この強度異方性の低減には二軸延伸法か有効なことを示した。続いて本年度は、このセルロースフィルムの音響性能を向上させる目的として、延伸セルロースフィルムの結晶化を行ない、高次構造特性ならびに音響特性の指標となる弾性率と内部損失を測定し、それらの相関を解析した. NOCフィルムおよび二軸延伸セルロースフィルムの結晶化は、マーセル化の手法を適用し、水酸化ナトリウム水溶液を用いて行なった。その結果、両フィルムはともにセルロースIIの結晶形で結晶化し、結晶化度もともに45%まで増加し、初期の約3倍となった。そしてX線回折を用いた高次構造解析から、フィルム表面に対するグルコース環の配向に関して、結晶化NOCはランダム配向、結晶化二軸延伸セルロースフィルムは(1-10)面配向していることがそれぞれ明らかとなった。 いっぽう音響特性(力学物性)に関しては、両フィルムとも結晶化前後で変化が見られなかった。これは、形成した結晶子のサイズが小さく分散しているため、力学物性の増大につながらなかったものと考えられた。よって音響特性の向上に対して結晶化は影響を与えないことがわかった。 これまでの結果から、ネマティック配列構造を有するセルロースから、透明でフレキシブル、生分解性があり、高性能な音響特性を有する音響デバイスを開発する指針が得られた。
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