2004 Fiscal Year Annual Research Report
耳石の微量元素特性を用いた魚類の回遊履歴と集団構造の解析に関する研究
Project/Area Number |
15780130
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 崇臣 東京大学, 海洋研究所, 助手 (70323631)
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Keywords | 耳石 / 微量元素 / Sr / Ca比 / 回遊 / 生活史 / 集団構造 / 多様性 / 生態 |
Research Abstract |
本研究は、魚類耳石の微量元素特性を指標として個体の生息水域の変化(回遊経路)や集団構造を正確に復元することが目的である。本年度は、昨年度に引き続いてサケ科魚類やウナギ属魚類をはじめとする通し回遊魚に耳石微量元素解析を行い、回遊履歴を推定することによって生活史の多様性を明らかにすることを目的とした。その研究成果の概要は以下の通りである。(1)イトウHucho perryiの耳石のSr/Ca比から本種の回遊履歴を推定した.海洋生活を経ない(淡水飼育)個体では耳石の中心から縁辺にいたるまでSr/Ca比は一貫して低かった.2003年5月にサハリン島アインスコエ湖で採集された個体は,耳石中心から700〜2140μmの部分までは低く,その後Sr/Ca比の急激な増加がみられ,その後耳石の縁辺部分まで高値が続いた.以上のことからイトウの耳石のSr/Ca比の低い部分と高い部分は,生息環境水中のSr/Ca比を反映し,それぞれ淡水生活期間と降海後の海洋生活期間に対応しているものと考えられた、これより,本種の回遊履歴を耳石のSr/Ca比によって推定できると考えられた. (2)ニュージーランド産ウナギ二種間の異なった成育場利用:ニュージーランド沿岸の湖で採集した2種のウナギ属魚類Anguilla dieffenbachiiとA.australisの耳石Sr : Ca比から回遊履歴と成育場の利用状況を推定した。採集したA.dieffenbachiiとA.australisは,それぞれ15才から40才と13才から24才で,成長段階は降海回遊直前の銀ウナギであった.耳石Sr : Ca比はすべての個体で,海洋生活期に相当する中心部で14×10^<-3>-21×10^<-3>を示した。淡水生活期に相当する部位のSr : Ca比は個体によってまた種間で大きな差異が見られた.海洋生活期を除く全生活史にわたる平均Sr : Ca比は,二種のウナギで,1.8×10^<-3>-7.4×10^<-3>であった.これらのウナギは,川ウナギ,河口ウナギあるいは海ウナギと判断された.一方でA.dieffenbachiiはA.australisに比べて淡水環境を好む傾向があった.ニュージーランドに生息する2種のウナギ属魚類は,沿岸域に接岸後,様々な塩分環境に適応して過ごしていることが明らかになった.これら一連の成果は,Journal of Applied Ichthyology誌20号、Marine Ecology Progress Series誌26号やIchthyological Research誌51号などに公表した。
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Research Products
(4 results)