2003 Fiscal Year Annual Research Report
乳牛の消化管におけるカルシウム輸送関連タンパク質の発現解析
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15780201
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
山岸 則夫 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教授 (30281877)
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Keywords | カルシウム / 消化管 / 乳牛 / calbindin D9k / plasma membrane Ca2+-ATPase / vitamin D receptor / Messenger RNA |
Research Abstract |
【はじめに】 分娩前後の乳牛では生体内でのカルシウム(Ca)の流入と流出の不均衡の結果として低Ca血症が起こり易い.生体は骨や消化管からのCa動員により恒常性を保とうとするが,分娩時の乳牛では骨からの再吸収は抑制され消化管からのCa吸収に依存している.しかしながら,乳牛を対象とした消化管Ca吸収機構に関する研究は少ない.消化管でのCa吸収には粘膜細胞における能動輸送が深く関係しており,その制御因子としてcalbindin-D9K (CaBP9k),vitamin D受容体(VDR),plasma membrane Ca2+-ATPase (PMCA)などが知られている.今回,低Ca血症に関する基礎研究の一環として,乳牛の消化管におけるCa輸送関連タンパク質遺伝子の発現分布を解析した. 【材料と方法】 臨床的に健康なホルスタイン種乳牛4頭(12〜40ヶ月齢:♀)一ヶ月間同様の飼養環境で飼育し,安楽殺後,第一胃から直腸までの各部位10ヶ所の粘膜を採取しRT-PCR法によってCaBP9k,VDRおよびPMCA mRNAの発現を解析した. 【成績】 CaBP9k mRNAは十二指腸で極めて強く発現し,空腸において極めて弱い発現が認められた.VDR mRNAは第一胃から第四胃までの範囲では弱い発現であったが,十二指腸から直腸までの範囲では極めて強い発現が認められた.一方,PMCA mRNAでは,全ての領域にて発現が確認された. 【考察と今後の展開】 上記のRT-PCRによる解析によってCaBP9k以外のタンパク質遺伝子は消化管全域に分布するが,CaBP9k遺伝子は小腸近位に限局することが判明した.このことは,乳牛でも近位小腸がCa能動輸送の主要な部位であることの証拠になるものと考えられた.今後,いっそう詳細な結論を導き出すために,タンパク質レベルの解析を予定している.
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