2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15790036
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 亮太 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (40334338)
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Keywords | 長期記憶 / 遺伝子発現 / differential display |
Research Abstract |
本年度においてはナメクジにおける長期記憶の分子基盤解明を目指して長期記憶関連遺伝子のスクリーニング(下記1)、得られた遺伝子の機能解析(下記2)、および記憶安定化の時間推移の解析(下記3)、遺伝子機能解析のためのRNAi法の確立の試み(下記4)を行った。 1.条件刺激としてニンジンジュース、無条件刺激として1%硫酸キニジン溶液を用いた条件付けを行い、3時間後の前脳を摘出し、約100primerペアを用いたdifferential displayを行った結果、4種類の遺伝子の誘導を見出した。 2.得られた遺伝子は全てlate gene様の発誘導様式を示し、これらのうちの一つはヒトやマウスで見出されているCD39L2やCD39L4にホモロジーを持つectonucleotidaseであり、もう一つはo-glycosylationを受けて細胞外に放出される低分子量の分泌タンパクであった。 3.ナメクジの条件付け前にタンパク合成阻害剤(アニソマイシン)を高い濃度で投与すると、2日目以降の記憶保持が障害されるが、投与する用量を下げてゆくと、3日目以降の記憶保持が障害されるようになった。さらに用量を下げた場合には完全な長期記憶が形成された。このことからナメクジの記憶の安定化には学習後3日以内が重要であることが示され、またこの間の記憶保持には学習直後に有る程度以上のタンパク合成が必要であることも示した。 4.ナメクジの体腔に学習関連遺伝子LAPS18のdsRNAを投与すると、尾部では内在性のLAPS18 mRNAの発現レベルが24時間後に低下したが、脳や胴部(上半身)では効果がなかった。またNO synthaseやsoluble guanylate cyclase alphaに対するdsRNAではいずれの体部位でも効果が認められなかった。このことから、ナメクジにおいはRNAi法が適用可能な遺伝子が限定されている、あるいは臓器が限定されているという可能性が示唆された。
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