2003 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞からの心筋細胞分化におけるインテグリン情報伝達系の役割
Project/Area Number |
15790141
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
佐藤 陽治 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子細胞医薬部, 主任研究官 (40312285)
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Keywords | 心筋細胞 / 幹細胞 / 再生医療 / インテグリン |
Research Abstract |
心筋幹細胞移植は心筋梗塞治療における新しい手法として注目されているが、実用化には幹細胞から目的とする細胞種(=心筋細胞)への効率的な分化誘導の技術が不可欠であり、また細胞移植の安全生を評価・確保するためには心筋細胞分化の機序をより詳細に理解する必要がある。本研究では細胞-基質間および細胞-細胞間の接着分子、かつ情報伝達分子であるインテグリンに着目し、特定のインテグリンアイソフォームが心筋細胞分化を調節するという仮説を立て、マウス胚性癌細胞由来の幹細胞、P19CL6の心筋細胞分化に影響を与えるインテグリンアイソフォームを同定すること、およびその細胞内シグナル伝達経路を解明することを目標とする。本年度は、P19CL6細胞のDMSOによる心筋細胞分化誘導に及ぼす細胞培養容器のコーティング素材の効果を示す目的で細胞外マトリックスコーティングなし(Cont群)、ファイブロネクチンコート(FN)、ラミニンコート(LN)、コラーゲンタイプIコート(ColI)、コラーゲンタイプIV(ColIV)コートの各種の細胞培養容器において1% DMSO存在下でP19CL6細胞を培養し、FNおよびLN上の細胞では自動拍動を示すエリアの数がCont群と比較して抑制されることを初めて明らかにした。これに対してColI、ColIV上の細胞では自動拍動を示すエリアの数においてCont群と比較して差は認められなかった。分化誘導8日間の1% DMSO処理を施したP19CL6細胞における遺伝子発現に対するFNの影響を検討したところ、FNによって転写因子Nkx2.5/Csx、MEF2C、GATA4の遺伝子発現が有意に低下することが確認された。これらの転写因子は心筋細胞特異的蛋白質の発現に極めて重要な役割を示すことが知られており、FNはこれらの転写因子の発現上昇を抑えることにより心筋細胞分化を抑制することが示唆された。
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