2003 Fiscal Year Annual Research Report
カロリ病モデルPCKラットの肝内胆管上皮細胞の増殖機構の解明とその制御
Project/Area Number |
15790177
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 保則 金沢大学, 医学系研究科, 助手 (30324073)
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Keywords | 人体病理学 / 肝臓病理 / 胆管細胞 / 分子生物学 |
Research Abstract |
ヒトカロリ病のモデル動物とされるPCKラットを用いて,本年度は,上皮成長因子(EGF)の主要な細胞内シグナル伝達系であるMAPK,特に古典的MAPK(MEK1/2-ERK1/2)とMEK5-ERK5系に着目し,PCKラットの肝内胆管上皮細胞の増殖機構を検討した。【成績】(1)免疫組織化学的検討:肝組織切片上でのEGFの発現は,胆管周囲の肥満細胞に認められ,また,EGFレセプター(EGFR)はPCK,コントロール(SD)ラットとも胆管上皮細胞にびまん性に発現していた。リン酸化(p)-ERK1/2の局在は胆管上皮細胞に散在性にみられるのみであったが,p-ERK5は胆管上皮細胞びまん性,かつPCKラットにおいて陽性シグナルの強度が強かった。(2)培養胆管上皮細胞を用いた検討:PCKラットの培養肝内胆管上皮細胞はEGF刺激(20ng/ml)に対し,コントロールと比較して約2倍の増殖活性を示した。ウエスタンブロット法による検討では,EGF刺激下の培養胆管細胞において,PCK,コントロールラットともERK1/2は強く発現していたが,p-MEK1/2,p-ERK1/2の発現は殆どなかった。一方,MEK5はPCKラットの培養胆管細胞で発現増強がみられ,これに対応してp-ERK5の発現もPCKラットで強かった。古典的MAPK阻害剤発現増強がみられ,これに対応してp-ERK5の発現もPCKラットで強かった。古典的MAPK阻害剤(PD98059,U0126)を用いたMAPK阻害実験では,PCK,コントロールラットいずれも培養胆管細胞の増殖活性は阻害されなかったが,MEK5に対するsiRNAおよびEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(ZD1839)はPCKラットの培養胆管細胞の増殖を有意に抑制した。【まとめ】PCKラットの肝内胆管上皮細胞の増殖には,古典的MAPKの関与は低く,MEK5-ERK5シグナル伝達系の亢進が関与していることが示された。【今後】PCKラットにin vivoでZD1839を投与し,肝嚢胞形成が抑制されるか否かを検討する。
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