2003 Fiscal Year Annual Research Report
前癌病変のクローン性解析:ホルマリン固定病理標本からの長鎖遺伝子抽出法の検討
Project/Area Number |
15790188
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
村瀬 貴幸 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (40315875)
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Keywords | 複合型小細胞癌 / 肺癌 / CD56 / p53遺伝子 / 点突然変異 / 常染色体3番短腕 / 異種接合性欠失 |
Research Abstract |
悪性腫瘍において同一腫瘍中に複数の組織成分が混在していることは決して稀な現象ではない。そして、組織成分相互間クローナリティの解明は腫瘍発生学における中心命題である。特に、肺癌では稀ではあるが小細胞癌及び非小細胞癌(扁平上皮癌或いは腺癌)が混在し、前記組織型は複合型小細胞癌と命名されている。しかし、複合型小細胞癌の組織成分相互間クローナリティに関する研究は乏しく、遺伝子学的知見の集積が現在必要とされている。故に、複合型肺小細胞癌症例6例を対象とし、それらの各々の組織成分から得られた遺伝子検体を用いて研究を行った。方法としては複合型肺小細胞癌6症例各々の組織成分から得られたDNAを使用し、癌抑制遺伝子p53の点突然変異及び第3染色体短腕の異種接合性欠失の検索を行った。検索部位は癌抑制遺伝子p53ではexon5からexon8まで、第3染色体短腕では3p14.2、3p14.3、3p21、3p21.2-21.3、3p21.3、3p22-24、3p25とした。複合型肺小細胞癌6症例すべてにおいて腺癌成分が存在し、うち3例においては扁平上皮癌成分も存在していた。5例の小細胞癌成分においては癌抑制遺伝子p53の点突然変異が認められ、5例中扁平上皮癌成分1例及び腺癌成分1例においても癌抑制遺伝子p53の点突然変異が認められた。同一症例間で扁平上皮癌成分は小細胞癌成分と同一部位に変異を認めたが、腺癌成分では小細胞癌成分と異なる部位に変異が存在した。また、第3染色体短腕の異種接合性欠失検索では扁平上皮癌成分3例全例の異種接合性欠失部位は同一症例の小細胞癌成分の異種接合性欠失部位に包含されていた。しかし、腺癌成分においては異種接合性欠失の存在した4例中3例は同一症例の小細包癌成分と比較して異なる部位の異種接合性欠失が認められた。以上により、複合型肺小細胞癌においては小細胞癌成分と扁平上皮癌成分ではクローン性の関連が認められたが、小細胞癌成分と腺癌成分とはクローン性の関連は乏しかった。当研究結果は複合型肺小細胞癌の腺癌成分は小細胞癌・扁平上皮癌成分とは腫瘍発生早期において異なった増殖経路を経ている可能性或いは両者の衝突の可能性を示唆している。
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Research Products
(1 results)