2003 Fiscal Year Annual Research Report
感染症に対する内分泌かく乱物質の影響についての研究
Project/Area Number |
15790230
|
Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
杉山 圭一 国立医薬品食品衛生研究所, 衛生微生物部, 研究員 (80356237)
|
Keywords | 感染症 / 内分泌かく乱物質 / 細菌内毒素 / マクロファージ / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
感染症に対する内分泌かく乱物質の影響を検討するため、平成15年度は細菌内毒素(lippopolisaccharide, LPS)刺激によりマクロファージから産生されるサイトカインに与える内分泌かく乱物質の影響を検討した。内分泌かく乱物質にはエストロゲンレセプターのアゴニストであるβ-estradiol及びその類似体である17-α-ethynylestradiol、diethylstillbestrolを、ダイオキシンレセプターのアゴニストにはβ-naphthoflavone、3-methylcholanthreneを使用してサイトカインの産生に与える影響を検討した。 マウスのマクロファージ様細胞であるRAW264においてエストロゲンレセプターの生体内のリガンドであるβ-estradiolは、低濃度(0.1nM〜1.0μM)ではLPSによる一酸化窒素(NO)産生を増強したが10μM以上の濃度では逆に抑制作用を示した。一方、合成エストロゲンである17-α-ethynylestradiolとdiethylstillbestrolでは10μM以上の濃度のβ-estradiolで認められた抑制効果のみが再現された。TNF-αの産生に関しては、β-estradiolは検討した濃度(0.1nM〜1.0μM)において顕著な影響を与えなかった。 ダイオキシンレセプターのアゴニストであるβ-naphthoflavone、3-methylcholanthreneもTNF-αの産生には大きな影響を及ぼさなかったが、NO産生についてはβ-naphthoflavoneにのみ増強作用が認められた。しかし、この現象は3-methylcholanthreneでは認められなかったことから、ダイオキシンレセプターを介した作用ではないことが示唆された。 次に、今回使用した全てのエストロゲンレセプターのアゴニストに認められたNO産生の抑制作用についてそのメカニズムの検討を行った。マクロファージにおけるNO合成は誘導型NO合成酵素(iNOS)により行われる。そこでNO産生に及ぼすβ-estradiolの抑制作用がiNOS遺伝子の転写レベルに起因するかをマウスiNOS遺伝子のプロモターを用いたレポーター遺伝子を構築して検討した。その結果、β-estradiolの濃度が10μM以上においてレポーター活性の抑制効果が確認された。またWestern blottingによる解析によりiNOSタンパク質量も同様の傾向を示した。これより、マクロファージでのエストロゲンレセプターのアゴニストによるLPS誘導性NO産生の抑制作用には、iNOS遺伝子の転写抑制が関与することが明らかとなった。
|