医療従事者の多忙、疲労、ストレスと事故発生に関する研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 15790264
• Research Institution: Gunma University
• Principal Investigator: 関 由起子 群馬大学, 医学部, 講師 (30342687)
• Keywords: 医療事故 / 労働環境 / 防護 / 業務分析 / 注射業務

Research Abstract

本年度は、注射業務において看護師にエラーを発生させる業務過程や防護の欠陥を明らかにするために、2病院4病棟とその病棟に所属する看護師を対象とし、業務分析、エラー事例分析を行った。その結果、注射業務過程はエラーを最小にする単純化、標準化、可視性、可逆性に乏しい状況があった。注射業務過程に存在する防護は、「指示内容と各段階で扱う薬剤情報との照合確認」、「次段階の担当者への業務終了合図と情報伝達」、「適切な作業行為の保障」、「指示内容の妥当性の検討」の4つが抽出された。しかし、これら各々の防護手段は一つであり、また、防護のエラーが他で発見・訂正されるシステムは存在せず、エラーを事故に結び付けないための多重防護がきわめて弱かった。エラー事例分析の結果からエラーを誘発させる労働環境要因として、作業環境として業務過多、業務中断、チーム要因として文字情報によるコミュニケーションの不備、職種間のコミュニケーションの不備、個人要因として知識・経験不足、業務要因として実施困難な業務内容、責任の所在が不明確な業務段階、患者要因として患者の非協力・協力不能が抽出された。有効な注射事故防止対策のためには、まず業務過程と防護内容を明らかにし、エラーの発生を最小限にする業務過程の構築と、業務過程に存在する防護の欠陥を改善すること、さらにエラーを発生させる数々の労働環境を改善することが重要であると示唆された。