2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15790270
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
光本 篤史 城西大学, 薬学部, 講師 (00276164)
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Keywords | サーカディアンリズム / 時計遺伝子 / 摂食 / 制限給餌 / 高脂肪食 / 薬物代謝 / 糖尿病 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
本研究は、糖尿病をはじめとする生活習慣病において、薬物の作用に及ぼす生体リズムの影響を解明することを目標としている。初年度の目的は、(1)生体リズム変調状態の解析、(2)薬物代謝および体内動態の生体リズム依存性の評価であった。以下、この2つの視点から現在までに得られた結果の概要を記す。 (1)生体リズム変調状態の解析 摂食は糖尿病などの生活習慣病発症に深くかかわる後天的要因である。摂食リズムは体内時計に影響を及ぼすことが知られているため、種々の条件下における摂食と肝臓内時計遺伝子発現、および個体レベルの生理機能との相関についてマウスを用いて検討した。その結果、休止期に摂食させると3日以内に肝臓の時計遺伝子発現リズムは、位相が反転した。輪回し行動の活動開始時間は制限給餌によって特に影響を受けなかった。体温リズムは、肝臓時計遺伝子変化に遅れて位相シフトした。一方、エネルギー代謝リズムは制限給餌リズムに呼応して反転した。エネルギー消費量と呼吸商いずれも反転が見られたため、肥満の原因となる高脂肪食を与えて呼吸商を低下させリズムを消失させたが、時計遺伝子発現には影響が見られなかった。以上の結果は、摂食に基づくエネルギー消費量のリズムが、時計遺伝子の発現リズムに深く影響を与えていることを示している。また糖代謝と脂質代謝の逆相関関係は、時計遺伝子の発現変化には影響を与えないことが分かった。これらの結果は、栄養状態の変化が体内時計に影響を及ぼすことを示唆しており、栄養状態の異常が知られる生活習慣病において、生体リズム変調が起きていることを想起させるものである。 (2)薬物代謝および体内動態の生体リズム依存性の評価 薬物の働きに投与時間依存性や生体リズムの影響を知る目的で、ヒト肝臓薬物代謝酵素CYPIA2およびCYP3C9のモデル基質として用いられるカフェインとトルブタミドをマウスに投与し、その体内動態および代謝物について検討した。カフェインについては、休止期に比べ活動期に投与すると消失半減期が長くなる傾向が認められた。また代謝物の生成割合には明らかな違いが認められ、薬物代謝能の生体リズム依存性が示唆された。トルブタミドにおいても同様の検討を行ったところ、代謝物生成において投与時間依存的な違いは少なかった。これら薬物代謝能の個体レベルの検討は、今後更なる詳細な検討が必要である。 今後は、糖尿病モデル動物を作成し、病態下での生体リズム、病態がリズム変調に及ぼす影響、病態下での薬物体内動態および薬物代謝の生体リズム依存性などについて、評価していく予定である。
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