2003 Fiscal Year Annual Research Report
熱処理アスベスト材料フォーステライトの気管内注入試験による生体影響評価
Project/Area Number |
15790289
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30321897)
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Keywords | アスベスト / クリソタイル / フォーステライト / 熱処理 / 気管支肺胞洗浄 / 肺病理組織学 / 繊維化 |
Research Abstract |
わが国でも2004年10月よりクリソタイルを含むアスベスト使用がほぼ禁止されることとなるが、今後増加するアスベスト含有廃棄物の安全なリサイクル処理が重要な課題である。そこで、本研究は、リサイクル処理法のひとつであるクリソタイルを800〜900℃で加熱しフォーステライト化する方法に注目し、クリソタイルより得られた焼成フォーステライトの呼吸器影響をクリソタイルと比較評価することを目的とした。動物実験としてクリソタイルについて実験データが豊富であり、吸入試験よりも簡便であるラット気管内注入試験法を行った。焼成フォーステライト、陽性対照のクリソタイルについてラット1匹あたり1mgの生理食塩水懸濁液を単回注入した。陰性対照は生理食塩水のみの注入とした。注入後、気管支肺胞洗浄液の細胞学的・生化学的分析、病理組織学的検索等を経時的に実施し、焼成フォーステライトの呼吸器影響について、クリソタイルと比較検討した。投与後6ヶ月まで気管支肺胞洗浄液分析を行った結果、焼成フォーステライトでは、炎症性変化、肺胞マクロファージへの傷害が陰性対照と比べてごくわずか認められたのみであった。また肺病理組織学的検索の結果、クリソタイルでは細気管支炎、肉芽腫、進行性の肺線維化がみられたのに対し、焼成フォーステライトでは軽度の変化しかみられず、発がん性を示す繊維状鉱物で認められるような進行性の肺線維化も観察されなかった。このことからクリソタイルを熱処理して得られた焼成フォーステライトの呼吸器影響はクリソタイルに比べてかなり弱いと考えられた。一般に繊維状鉱物の生体影響は繊維サイズ、体内耐久性等の繊維の物理化学的因子に左右されることが報告されていることから、次年度は、焼成温度、繊維サイズの異なる試料についても検討を行い、焼成フォーステライトの呼吸器影響を詳細に検討していく予定である。
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