2004 Fiscal Year Annual Research Report
低タンパク栄養状態の母親の母乳が、その乳仔に及ぼす影響に関する栄養形態学的研究
Project/Area Number |
15790310
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
近江 雅代 中村学園大学, 栄養科学部, 講師 (20301682)
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Keywords | タンパク栄養失調 / 血中アルブミン / 母乳タンパク / グルタチオン / 骨格筋 / 微細構造 / カルシウムイオン / Zラインストリーミング |
Research Abstract |
1.目的 本研究は、出産直後から低タンパク食で飼育した母親ラットの母乳でその新生児を授乳し、乳仔および母親の各種筋組織の微細構造に及ぼす影響について、出生直後から経日的に研究することで、タンパク栄養失調の本態を解明し、その予防的対策についての手がかりを得ることを目的とした。 2.材料と方法 AIN-93Gの組成に従い、低タンパク食(カゼイン5%)および対照食(カゼイン20%)を作製し、出産直後のウィスター系母親ラットを20日間それぞれの飼料にて飼育した。新生児ラットは出生後、すべて5匹に統一し、それぞれの母親の母乳を授乳した。出生日、授乳開始5、10、15、20日後、乳仔および母親の大胸筋の一部を切除、型のごとく、試料を作製し、形態学的に検索を行った。また、別の一部より、グルタチオン濃度を測定した。同時期の血中アルブミン濃度および肝トリグリセリド量、さらに、母乳中タンパク濃度およびトリグリセリド量を測定した。 3.結果と考察 低タンパク食群の母親の体重は、出産後から徐々に減少し、授乳20日では、対照群との間に100g程度の差が生じた。また、低タンパク食群の母親の血中アルブミン濃度は、出産後から減少し、授乳10日以降、有意に低値を示し、さらに、肝トリグリセリド量は、出産後、大きく増加し、いずれのことより、母親は典型的なタンパク栄養失調をきたしていた。しかし、母乳中タンパク濃度およびトリグリセリド量は、いずれの時期においても、両群間に差はなかった。低タンパク食群の授乳20日の乳仔の体重は、対照群の約半分であったものの、血中アルブミン濃度は授乳10日以降、若干の低下傾向を示しただけであった。さらに、低タンパク食群の肝トリグリセリド量においても、増加はしていたものの、出生直後からいずれの時期においても、対照群との間に有意差は得られなかった。また、低タンパク食群乳仔の大胸筋細胞において、形態学的所見では、授乳10日以降、Zラインのストリーミングを特徴とした筋原線維の微細構造傷害が出現することもあったが、その傷害の程度および出現頻度は、非常に軽微なものであった。 4.結論 低タンパク栄養は、母乳の分泌量を減少させるが、その成分組成には殆ど影響を及ぼさなかった。このことが、乳仔の発育不良を惹起した。一方、乳仔の大胸筋細胞の形態学的変化は、授乳10日以降、出現することがあるが、その場合でも、傷害の程度および頻度は非常に軽微であることが明らかとなった。
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