2003 Fiscal Year Annual Research Report
梗塞心及び不全心におけるToll-like receptor(TLR)4の機能解析
Project/Area Number |
15790386
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
尾山 純一 九州大学, 大学病院, 助手 (30359939)
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Keywords | inflammation / myocardial infarction / ischemia |
Research Abstract |
(背景) グラム陰性菌菌体成分リポポリサッカライドの受容体であるToll-like receptor(TLR)-4が梗塞心や不全心において過剰に発現している事が報告され、この受容体は単に細菌感染時における宿主側の免疫応答を司るだけでは無く心筋壊死を認識する受容体としての可能性が注目されている。それは、同時にこの受容体の細胞内シグナル伝達の下流の存在する炎症性サイトカイン及び免疫細胞の浸潤や接着を誘導するケモカインの産生の窓口になっている可能性が示唆される知見である。 (目的) 本研究の目的は、TLR-4の梗塞心及び不全心における発現の機序と役割について明らかにする。 (研究実績) 今回申請者は海外における研究を継続し、TLR-4欠損マウスを用いて実験的心筋虚血再灌流モデルを確立、通常マウスと比較し炎症免疫細胞の浸潤が減弱し、補体活性及び酸化ストレスが抑制され、最終的に梗塞サイズが減少する事を報告した。この新たな知見により、TLR-4が梗塞心において炎症を惹起し炎症細胞の浸潤を促す役割を果たしていることが明らかになった。この事は、今まで不明であった心筋梗塞患者等に於ける炎症性サイトカイン及びケモカインの発現のメカニズムを明らかにする知見と成り得る。また梗塞後の左心室リモデリングに影響を与えるサイトカインやケモカインの発現が抑制されることにより、心筋被薄化、繊維化に影響を与えるMMPの産生が抑制されることで左心室リモデリングが予防され、最終的には予後の改善も期待される。すなわち壊死心筋を認識しさらなる炎症を惹起する最初の関門(Toll)を抑える事により以降の増悪因子を根本的に抑制することを意味する。このことは心筋壊死後に発生する一連の事象に対し、個々に研究が行われて来た今までの治療研究とは明らかに一戦を画す根本的な新たな免疫学的な論点からの治療法が期待される。
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Research Products
(1 results)