2003 Fiscal Year Annual Research Report
腎性貧血におけるヘモグロビンスカベンジャー受容体の動態解析
Project/Area Number |
15790437
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
長場 泰 北里大学, 医学部, 講師 (40255279)
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Keywords | ヘムオキシゲナーゼ / ヘモグロビンスカベンジャー受容体 / CD163 / 定量的PCR / 慢性腎不全 / エリスロポエチン抵抗性貧血 |
Research Abstract |
《背景》慢性腎不全患者におけるエリスロポエチン抵抗性貧血の最も大きな原因は、鉄代謝の異常がエリスロポエチンの効果を阻害しているためと考えられる。近年、マクロファージの表面抗原として機能が不明であったCD163と呼ばれる細胞膜抗原が、鉄代謝の中心的物質であるヘモグロビン(Hb)を認識するスカベンジャー受容体であることが判明した。Hbは、血管内でハプトグロビン(Hp)と結合し、Hb-Hp複合体となりCD163により認識される。さらにマクロファージ内に取りこまれHemeとなったあと、重要な抗酸化ストレス酵素であるHeme Oxygenase(HO)により分解され再利用される。このような一連のメカニズムがヘモグロビンスカベンジャー受容体の発見により考えられている。平成14年度は対象を慢性腎不全にしぼり、透析導入期の患者より末梢血単核球を分離しHeme Oxygenase-1(HO-1)の発現解析を行った。また腎性貧血との関連を明らかにするため同時に新たに発見されたヘモグロビンスカベンジャー受容体であるCD163の解析も行った 《対象と方法》対象は10名の透析患者と7名のコントロール。通常の方法で末梢血単核球を分離し、RNAを抽出した。新たにデザインしたプライマーを用い、スタンダードをおいて定量的PCR(ABI PRISM7700)を施行した。 《結果と考察》透析患者におけるHO-1発現は30.63±6.62とコントロールの36.82±8.64に比し有意に低下しており、これは2週間後でも27.78±3.98と変わらなかった。CD163に関しては有意な変化は認めなかった。HO-1はIL-6などのサイトカインの影響を受けストレス下においては、産生亢進が予想されたが逆に抑制されていた。HO-1はHeme分解系の中心的役割を果たすのみならず、抗酸化作用の面から生態に有益に働くと考えられており、HO-1産生抑制は腎不全における腎性貧血の機序に何らかの影響を与えていると考えられた。 《結語》本研究結果は漫性腎不全におけるエリスロポエチン抵抗性貧血の主要な原因である鉄代謝障害の一部がHO-1、CD163の発現抑制により可能性を示唆するものであると考えられた。
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