2003 Fiscal Year Annual Research Report
シクロオキシゲナーゼ2依存性腎血流自動調節におけるエストロゲンの役割
Project/Area Number |
15790439
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
多田 由布子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30286471)
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Keywords | シクロオキシゲナーゼ-2 / エストロゲン / 卵巣摘出 / 腎血流 |
Research Abstract |
本研究では選択的シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)阻害薬が腎機能に及ぼす影響を、ラットをもちいて食塩摂取状況や病態(卵巣摘出に伴う内因性エストロゲン欠乏等)に応じて検討した。免疫組織学的および蛋白レベルの検討により、ヘンレ上行脚厚部の細胞近傍のCOX-2発現が減塩によって増加することはこれまで明らかとされていたが、今回、摂取塩分量とは独立して卵巣摘出によっても増加することを示した。また、COX-2の腎臓内分布は皮質から髄質にかけて増加しているが、腎機能に対するその役割を検討するために、針型レーザー血流計を用いて、腎皮質および腎髄質の血流を同時に測定し比較した。その結果、卵巣摘出はCOX-2発現の増強を介して腎皮質血流に影響を及ぼしており、減塩が加わると腎髄質血流にも影響が及ぶと考えられた。さらに、エストロゲン補充療法を行い、この卵巣摘出後に増加するCOX-2発現およびCOX-2依存性腎血流調節がエストロゲン補充により抑制されること示した。以上の結果より選択的COX-2阻害薬は従来の非ステロイド系消炎鎮痛薬とくらべ副作用が少ないため普及しつつあるが、閉経後の女性や何らかの原因で卵巣を摘出した女性では、COX-2阻害薬によって腎血流が低下しやすく、さらに減塩によってそれが助長されることが示唆され、処方する際には充分な注意を要すると考えられた。また、この副作用はエストロゲン補充により予防し得ることも示唆された。
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