2003 Fiscal Year Annual Research Report
抗アポトーシス分子を用いた筋萎縮性側索硬化症の治療法に関する研究
Project/Area Number |
15790459
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
井上 治久 独立行政法人理化学研究所, 運動系神経変性研究チーム, 研究員 (70332327)
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Keywords | ALS / apoptosis / Caspase-9 / XIAP / p35 / SOD1 |
Research Abstract |
1.研究手法 これまでのALSモデルマウスを用いた治療実験より、広範性カスパーゼ阻害剤は、ALSマウスの発症時期、罹病期間、生存期間を延長することが報告されていた。一方、カスパーゼ-9より上流で細胞死を抑制するBcl-2をALSマウスの運動ニューロンへ遺伝子導入した実験では、発症時期、生存期間の延長は認められたが、罹病期間の延長は認められなかった。以上から、罹病期間に関与するカスパーゼは、Bcl-2以降、すなわちカスパーゼ-9からはじまるミトコンドリア依存性アポトーシス経路である、という仮説をたてた。 仮説の検証のため、カスパーゼ-9を抑制するヒトアポトーシス阻害タンパクXIAPを脊髄運動ニューロンに発現するマウスと、カスパーゼ-9以外のほとんどのカスパーゼを抑制するバキュロウイルスのタンパク、p35を脊髄運動ニューロンに発現する2種類のマウスを作製した。次にこれらのマウスをALSモデルマウスと交配し、それぞれの遺伝子を有するマウスを比較し、XIAPあるいはp35が、ALSモデルマウスの生存期間、罹病期間、発症時期に与える影響をしらべた。さらに、ヒトALSの剖検脊髄の運動神経細胞におけるカスパーゼ-9の活性化を調べた。 2.研究成果 実験の結果、次のことがわかった。 (1)運動神経細胞のカスパーゼ-9の活性を抑制することにより、ALSモデルマウスの発症後の病勢進行が緩和され、罹病期間が延長した。 (2)p35遺伝子を発現するマウスでは発症時期が遅れることから、p35で阻害されるカスパーゼ-9以外のカスパーゼがALSモデルマウスの発症を早める役割を持っていることがわかった。 (3)ヒト孤発性ALSの運動神経細胞で、発症していない方に比べてカスパーゼ-9が活性化していた。 以上のことから、運動神経細胞のカスパーゼ-9の活性化抑制が、ALSにおける実際の治療標的の1つになる可能性が示された。
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Research Products
(1 results)