2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15790465
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮脇 一真 京都大学, 医学研究科, 助手 (00359811)
|
Keywords | GIP / 脂肪 / エネルギー代謝 / 高脂肪食 / 消化管ホルモン |
Research Abstract |
国民栄養調査による統計では、一人当たりの総エネルギー摂取量は1970年をピークにその後は漸減傾向にあるが、総エネルギーに占める脂肪エネルギー比は漸増し適正比率の25%を越えている。一方、BMIは脂肪エネルギー比に相関し男女共に増加傾向を示している。これらの疫学的な知見は、エネルギー摂取量のみならず脂肪摂取そのものがヒトの肥満の成因に深くかかわっていることを示している。 脂肪は、消化管ホルモンGastric inhibitory polypeptide (GIP)の強力な分泌刺激であり、GIPシグナルを欠損した個体では、過食や高脂肪食による肥満に対し抵抗性を示す。申請者は、GIP受容体欠損マウスにおけるエネルギー代謝を検討したところ、高脂肪食負荷前は、野生型およびGIP受容体欠損マウス間で差は認められないものの、3週間負荷した後ではGIP受容体欠損マウスが明期(休眠期)に脂肪を多く燃焼していた。また、野生型マウスでは、高脂肪食負荷により酸素消費率が次第に低下していくのに対し、GIP受容体欠損マウスでは酸素消費率は常に不変であった。しかしながら、肥満形成時のこのようなエネルギー代謝変化がどうして起こるのかは現在のところ全く不明である。本研究では、このGIPシグナルによって仲介されるエネルギー代謝変化と肥満発症の因果関係を解明する。 平成15年度は、通常食(脂質13%、炭水化物60%、蛋白質27%;3.57Kcal/g)と、高脂肪食(脂質45%、炭水化物35%、蛋白質20%;3.57Kcal/g)を調製し、野生型マウスおよびGIP受容体欠損マウスを用いて継時的に体重変化、酸素消費、脂肪消費を詳細に調べ、代謝変化が起こり始める時期を比較した。 野生型C57BL6マウスを、2群に分け代謝測定を行い両群に差がないことを確認した上で、一方には通常食、もう一方には高脂肪食を負荷した。体重は既に3週目より高脂肪食群で有意に上昇し始めた。このとき脂肪消費は高脂肪食群で徐々に上昇し始め、約5週ののち定常状態に達した。これは、高脂肪食の脂肪含率に合致した。酸素消費量は9週目以降より高脂肪食群で低下した。一方GIP受容体欠損マウスでは、高脂肪食群は1週目、2週目という非常に早期の段階から脂肪摂取は定常状態に達していた。一方、酸素消費量は通常食群と高脂肪食群で差を認めなかった。このことから、GIP受容体欠損マウスでは、脂肪の消費が非常に亢進しやすいこと、そのために肥満を起こしにくいものと考えられた。今後、さらにこの分子的メカニズムを解明していく。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 宮脇一真, 山田祐一郎: "GIPシグナルを介した肥満発症機構"医学のあゆみ. 205巻・7号. 475-476 (2003)
-
[Publications] 宮脇一真, 月山克史, 山田祐一郎, 清野裕: "GIP情報伝達と体重調節"内分泌・糖尿病科. 17巻・5号. 489-496 (2003)