2005 Fiscal Year Annual Research Report
心臓特異的リポ蛋白リパーゼ過剰発現マウスの脂肪毒性による心筋障害のメカニズム解明
Project/Area Number |
15790468
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
野牛 宏晃 自治医科大学, 医学部, 講師 (60348018)
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Keywords | リポ蛋白リパーゼ / 脂肪酸 / 脂肪毒性 / 心筋障害 / PPAR-α |
Research Abstract |
リポ蛋白リパーゼ(LpL)は、トリグリセライド(TG)に富むリポ蛋白であるVLDLやカイロミクロン中のTGを加水分解することにより血清TG代謝を調節する酵素である。一方この過程により産生される脂肪酸(FFA)は、骨格筋、心筋などでエネルギー源として利用されることから、組織でエネルギー代謝にも重要な酵素であると言える。近年私達はGPI anchorを結合させたLpLを心筋細胞に過剰発現させたトランスジェニックマウス(hLpL^<GPI>)を作製し、脂肪毒性(lipotoxicity)による心筋障害を明らかにした。hLpL^<GPI>マウスでは、心臓におけるリポ蛋白由来のTGあるいはFAの取り込みが増加すると共にPPAR-α、acyl-CoA oxidase、CPT-1といった細胞内脂肪酸代謝及びβ酸化経路に関与する酵素の遺伝子発現が亢進していた。また電子顕微鏡ではミトコンドリアの増殖、心筋構造の破壊を認め、心臓超音波では心機能低下が認められた。そこでhLpL^<GPI>マウスにおいて細胞内脂肪酸代謝を調節するPPAR-α遺伝子を欠損させ、PPAR-αの心筋障害に及ぼす影響を検討した。hLpL^<GPI>マウスとPPAR-α欠損(PPAR-αKO)マウスを交配させ、hLpL^<GPI>/PPAR-αKOを作製し、血糖及び血清脂質について検討した。hLpL^<GPI>/PPAR-α KOマウス(n=9)はhLpL^<GPI>マウス(n=10)に比べ、血糖が34%低下(30.9±4.3vs.46.6±13.3mg/dl, p<0.01)、TGは245%の増加(199.1±11.5vs.57.7±27.4mg/dl, p<0.01)、FAは78%の増加(1.74±0.27vs.0.98±0.21mEq/l, p<0.01)を認めた。心臓において心不全マーカーであるatirial natriuretic factor(ANF)の発現は両群間で発現の差を認めなかった。一方PPAR-αを欠損させるのではなく、hLpL^<GPI>マウスにPPAR-αagonistであるfenofibrateを投与したところ血清TGに変化は認められなかったが心臓におけるANFが増加し、心機能障害の増悪を認めた。近年、脂肪酸による臓器障害の存在が明らかになり、脂肪毒性(lipotoxicity)のメカニズムが注目されている。この度の実験からPPAR-αと脂肪毒性、さらに心機能障害を一元的に直接的に結びつけることは困難であるが、血清TG及びFFAレベルの変化とPPAR-α発現の変化がlipotoxicityに重要であると考えられた。
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