2003 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍におけるインスリン様成長因子の役割の解明と受容体活性の測定法の確立
Project/Area Number |
15790483
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
大久保 由美子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (80287317)
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Keywords | IGF-I / 受容体 / 細胞機能 |
Research Abstract |
腫瘍におけるインスリン様成長因子(insulin-like growth factor ; IGF)の役割の解明として、分化型腫瘍である甲状腺乳頭癌組織におけるタイプ1IGF受容体(IGF1R)の発現について検討した。手術時に得られた腫瘍部と非腫瘍部の組織からタンパクを抽出した。IGF1Rタンパクの定量とin vitroでのIGF-I添加刺激によるIGF1Rのチロシンリン酸化を解析した。また組織からmRNAを抽出しcDNAを作成後、real-time PCRにてIGF1Rを定量した。血中成長ホルモン(GH)およびIGF-Iが高値である先端巨大症に合併した甲状腺乳頭癌および良性の腺腫様甲状腺腫についても検討した。 IGF1Rタンパク量は非腫瘍部に比し、乳頭癌では1.4〜2.5倍に増加しており、先端巨大症の癌および良性腫瘍でも同程度のIGF1Rを有していた。外因性IGF-I刺激に対するIGF1Rリン酸化は、非腫瘍部および腫瘍部ともに無刺激の状態の1.3〜1.8倍であった。これに対して先端巨大症に合併した良性腫瘍ではIGF-I刺激によりIGF1Rは3.8倍に増加した。またreal-time PCRによるRNA発現量の解析では、非腫瘍部に比し腫瘍部では1.3〜4.5倍と検体間差を認めた。 以上のことから高分化癌である甲状腺乳頭癌の腫瘍発生・発育にIGF1Rの発現増加が関与している可能性が示唆された。また慢性的に高レベルのIGF-Iにさらされた末端肥大症に合併した良性腫瘍ではIGF1Rの機能亢進が認められ、IGF-IおよびIGF1Rの甲状腺腫瘍の発生への関与が示唆された。現在IGF-Iによる甲状腺細胞のIGF1R発現の調節について検討中である。 またIGF-Iの生理作用および生物活性を解析する系として、IGF1Rの活性化を定量分析する方法の確立を試みた。IGF-I刺激に対する初期応答遺伝子のひとつであるc-fosの発現を検討するため、c-fosプロモーター部位をレポーターであるルシフェラーゼcDNAの上流に組み込んだDNA constructを作成し、ヒトIGF1Rを過剰発現させたマウス線維芽細胞株に遺伝子導入させた。 この細胞をクローニングし、IGF-I用量依存性にルシフェラーゼ活性が上昇することを確認した。今後はこの系を用いて、低血糖を呈するIGF-II産生膵外腫瘍(non-islet cell tumor hypoglycemia ; NICTH)をはじめとして、IGFの作用異常が考えられる病態の解明を行う予定である。
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