2003 Fiscal Year Annual Research Report
免疫性血小板減少性紫斑病に対するH.pylori除菌療法の効果発現機序の解明
Project/Area Number |
15790501
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
朝日 厚子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50348265)
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Keywords | 特発性血小板減少性紫斑病 / H.pylori / 除菌療法 / 抗血小板抗体 / 血小板 |
Research Abstract |
免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)に対する新たな治療としてH.pylori除菌療法が注目されているが、ITPの病態におけるH.pyloriの役割について不明な点が多い。除菌療法の臨床効果とGPIIb/IIIaに対する抗血小板自己抗体産生に与える影響を前向きに検討した。血小板5万/μl以下の慢性ITP32例を対象とした。H.pylori感染は血中抗体価、尿素呼気試験、便中抗原(HpSA)により検索し、全てで陰性をH.pylori陰性とした。感染の有無にかかわらず全例で標準的な除菌療法を施行し、有効例は12週後の血小板が10万/μlを越えた例とした。H.pylori陽性21例(66%)と陰性11例の全例に除菌療法を行った。H.pylori陽性20例で除菌に成功し、残る1例もMTZを用いた再治療により除菌し得た。H.pylori陽性10例(48%)が有効例に分類されたが、陰性全例で血小板増加は全くみられなかった。有効例全例が24週、4例が48週時も血小板数10万/μl以上を維持し、再発例はない。H.pylori陽性有効群10例、陽性無効群11例、陰性群11例の3群間における治療前の血小板数、性、年齢、治療歴、抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞頻度に有意差はなかった。12週までの抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞頻度の変化は3群間で有意に異なり(P=0.002)、H.pylori陽性有効群のみならず陽性無効例でも減少したが、H.pylori陰性例では全く変化なかった。除菌療法による臨床効果はH.pylori感染例にのみ観察され、H.pyloriとITPの病態との直接的な関与が考えられた。また、H.pylori除菌による血小板増加は抗血小板自己抗体の産生抑制を介する可能性が示された。次年度はH.pylori除菌療法が血小板数を増やす機序について抗血小板抗体産生、網内系機能、血小板産生の3点に着目して検討を重ねる予定である。
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