2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15790506
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
田中 宏和 財団法人 先端医療振興財団, 先端医療センター・再生医療研究部, 主任研究員 (40360846)
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Keywords | 細胞周期 / アポトーシス / 活性酸素種 |
Research Abstract |
本年度我々は、細胞周期の過剰な進行によって細胞死及びゲノム不安定性が増大する分子機構について検討を行なった。 マウス白血病細胞株M1は、IL-6添加によりアポトーシスが誘導されるが、M1細胞に細胞周期を正に制御するcyclin D1やE2F1を過剰発現させた場合、IL-6だけでなく抗腫瘍薬や放射線照射などの様々なアポトーシス誘導刺激に対する感受性が亢進した。これらの細胞ではアポトーシス誘導刺激前から活性酸素種(ROS)の蓄積が認められ、刺激によってより多くのROSの蓄積が認められた。カタラーゼによる前処理あるいはMnSODを共発現することでROSを消去した場合、これらのクローンのアポトーシス誘導刺激に対する感受性が解除された。またMockのクローンでは発生したROSに反応してNF-κBが活性化され、抗アポトーシス分子bcl-xLの発現が誘導されたが、cyclin D1やE2F1を過剰発現させたクローンではいずれもE2F1がp50と競合してp65に直接結合し、NF-κBの機能を阻害することにより、bcl-xLの発現が誘導されなかったことから、これらのクローンでは、ROSの過剰な蓄積に加え、bcl-xLの発現阻害により、種々刺激による著明なアポトーシスが誘導されると考えられた。さらにこれらのクローンでは、放射線照射により早期からROSを介したヒストンH2A.Xのリン酸化が認められ、Mre11などのDNA修復に関わる因子の早期からの発現が誘導された。またこれらのクローンでは、長期間の培養により、中心体の過剰複製に伴う異常な細胞分裂像が観察された。 以上の結果から、細胞周期の過度の進行により生じたROSは、アポトーシスだけでなくDNA傷害に対する感受性亢進さらにはゲノム不安定性の増大にも関与しており、細胞の腫瘍化や腫瘍細胞の進展に寄与していることが示唆された。 次年度は、ゲノム不安定性による細胞の腫瘍化、進展に及ぼすROSの分子機構を詳細に検討すると共に、造血発生や成体での正常造血におけるROSの役割について解析を行なうことを予定している。
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