2003 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚の肥満細胞によるビクニンの産生の検討とその生物学的意義の解析
Project/Area Number |
15790608
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
遠藤 英樹 近畿大学, 医学部, 講師 (10298903)
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Keywords | ビクニン / トリプターゼ / 炎症性皮膚疾患 / 肥満細胞 |
Research Abstract |
ビクニンはserine protease inhibitorであり、マスト細胞より産生されるトリプターゼの機能を抑制する事が報告されている。トリプターゼは血管内皮細胞の細胞接着分子の表現を上昇させることにより皮膚局所における炎症の増幅に関与することが報告されており、皮膚における炎症反応の増幅に関与する事が推察されている。 今回報告者は肥満細胞によるビクニンの産生の有無を検討することにより皮膚の炎症のバイオフィードバック機構の存在を解析した。種々の皮膚生検検体(患者の同意を得た上で獲得する)を解析した結果、ページェット癌や有棘細胞癌などでは真皮内の肥満細胞数の増加を認め、また、アトピー性皮膚炎や乾癬などの炎症性皮膚疾患でも同様な傾向を認めた。ビクニンとトリプターゼの免疫二重染色を行ったところ、アトピー性皮膚炎では肥満細胞内でビクニンとトリプターゼの両方の蛋白の発現を認めたが、乾癬ではトリプターゼ陽性細胞を主に認め、ビクニン蛋白の表現はわずかであった。この結果は、炎症の種類によってビクニンによる抗炎症作用の様式に逢いがあることを示唆するものである。さらに、末梢血肥満細胞をstem cell factorの存在下で培養し、ビクニンmRNAの発現を検討したところ、ビクニンmRNAの発現を認め、このことから、肥満細胞はビクニンのmRNAおよび蛋白を産生しうる事が判明した。来年度の研究においては、さらにビクニンの発現の調節機構について検討を重ねてゆきたいと考える。
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