2004 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚の肥満細胞によるビクニンの産生の検討とその生物学的意義の解析
Project/Area Number |
15790608
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
遠藤 英樹 近畿大学, 医学部, 講師 (10298903)
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Keywords | ビクニン / トリプターゼ / 炎症性皮膚疾患 / 肥満細胞 |
Research Abstract |
本研究ではまずセリンプロテアーゼの一つであるビクニンを産生する皮膚構成細胞の同定を行った。この目的のために報告者が所属する教室で作成した抗ビクニンポリクローナル抗体を用い検討した。その結果、ヒト皮膚真皮の細胞に陽性のシグナルを認めた。同時に行った抗トリプターゼ抗体による免疫染色の結果ビクニン陽性細胞は同時にトリプターゼ陽性であることが明らかとなった。トリプターゼはヒト真皮の肥満細胞に特異的発現を示すことから、ビクニン陽性細胞は真皮肥満細胞であることが判明した。以前の報告によりビクニン蛋白の肥満細胞における発現は同細胞内の転写によらず、血清中のビクニンを肥満細胞上のビクニン受容体に結合させるためであると考えられていた。この点を検討する目的で、ヒト肥満細胞株HMC-1および末梢血よりSCF(stem cell factor)で培養したヒト末梢血肥満細胞よりRNAを単離し、ビクニン特異的プライマーを用いRT-PCR法を行った。その結果、ビクニンmRNAはHMC-1細胞および末梢血肥満細胞の両方で発現していることが確認された。次にビクニンmRNA発現の調節を検討する目的でHMC-1細胞をインターロイキン(IL)-4あるいはインターフェロン(IFN)-γで刺激しビクニンmRNAの発現に及ぼす影響を検討した。興味深いことに、ビクニンmRNA発現はIL-4により誘導されIFN-γにより抑制された。IL-4、IFN-γはおのおのTh2またはTh1細胞により分泌されることが知られている。よって、この結果はビクニンmRNAは優先的にTh1環境で発現の低下を示すことが示唆された。この推察が正しいかどうかを検討する目的で、Th1優位な疾患として乾癬をTh2型疾患としてアトピー性皮膚炎を対象疾患とし、同症を有する患者より得た皮膚生検検体を抗ビクニンおよび抗トリプターゼを用い2重免疫染色を行った。その結果、乾癬・アトピー両疾患において全ての肥満細胞はトリプターゼ蛋白を所有していたが,ビクニン蛋白陽性細胞は乾癬で減少を認めた。
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