2004 Fiscal Year Annual Research Report
内因性硫化水素生成遺伝子改変動物を用いた外科侵襲ストレス応答の生理作用解明
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15790700
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新谷 恒弘 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90327536)
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Keywords | 硫化水素 / Cystathionine β synthase |
Research Abstract |
<目的>有毒ガスとして知られている硫化水素(H_2S)は、今まで有毒ガス物質と考えられてきた。しかし、H_2Sは、一酸化窒素(NO)や一酸化炭素(CO)などのガス状メディエーターのように、生体内において必要不可欠な物質である可能性が示唆される。我々はラットの分離還流肝モデルにおいて、肝臓におけるH_2S合成酵素であるCystathionine γ lyase(CSE)の阻害剤を投与すると内因性H_2Sの産生量が減少し、胆汁中の重炭酸排出を増加し胆汁をアルカリ化させることを見出した。今回、肝臓におけるもうひとつのH_2S合成酵素であるCystathionine β synthase(CBS)由来のH2Sの役割に注目した。このCBSは、Heme酵素であることが知られており、ストレス応答性のCO生成によりその活性が制御される可能性の立証または否定を試みるべく、以下の実験を行った。 <方法>ストレス負荷として、C57BL/6マウス(Wild-type; WT)、CBS knock outマウス[Littermate(+/+)、Hetero-KO(+/-)]にhemin(40umol/Kg)を腹腔内投与し、任意の時間に開腹、胆汁外漏モデルを作成し30分間胆汁を集め、胆汁成分を解析した。 <結果>Hemin腹腔内投与を受けたWTでは12時間にはHO-1が誘導されCOが過剰産生されており、硫化水素生成の低下とこれに伴う重炭酸濃度と流量の増加が認められ胆汁のアルカリ化が起きた。この現象はzinc protoporphyrin(ZnPP)を持続静注したところ、H2Sの低下は消失し、胆汁中重炭酸濃度、流量の増加は消失した。さらにZnPP存在下でCOを徐放するmetal carbonyl化合物(CORM)を投与するとH2Sの低下が起こり、再び重炭酸濃度、流量が増加した。また、外因性にH2Sを投与すると(門脈よりNaHSとして)、Heminによる現象は消失した。さらに、Littermate(+/+)では、wild typeと同様にHemin投与群により肝臓中のH_2Sの減少と胆汁中重炭酸濃度、排出量の増加を認めたが、肝臓中のCBS蛋白量がlittermateの50%まで低下しているhetero(+/-)では、CO増加によるH2Sの低下が起こらず、結果として胆汁中重炭酸濃度、流量に変化を認めなかった。 <考察>In vivoにおいてストレス誘導性のCOを介して内因性H_2Sの産生量の減少が起こり、胆汁中への重炭酸分泌を増加を招来し、胆汁分泌機能のリモデリングが起こることが示された。この現象におけるCOのレセプタはCBSであり、新規のストレス下における臓器機能制御機構であることが示唆された。
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