2004 Fiscal Year Annual Research Report
人工酸素運搬体と抗血管新生治療を組み合わせた固形癌の酸素化と遺伝子発現変化の検討
Project/Area Number |
15790748
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
泉 陽太郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90245506)
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Keywords | 腫瘍組織酸素分圧 / 人工酸素運搬体 / 放射線照射 |
Research Abstract |
C57BL/6マウスにおいて脳表ウィンドウを作製した。ルイス肺癌株腫瘍片、直径約2mm、をウィンドウ内に移植し経過観察を行った。腫瘍径が約6mmに達した段階で、尾静脈よりFITCで蛍光ラベルされたデキストランを注入し、腫瘍の血管構築を観察した。腫瘍血管の発達は腫瘍片移植後早期より良好であった。しかし、発育速度にはかなりのばらつきがみられた。またある大きさから発育速度が急激に増すため適切な観察時期の決定が極めて困難であった。人工酸素運搬体を投与した際の腫瘍組織酸素分圧の測定は、この発育速度のばらつきのため測定時期の決定が困難であった。このため実験方法の面でアプローチを変え、当研究室において従来の経験から発育速度がより安定しているマウス大腿部皮下移植モデルで先ず腫瘍組織酸素分圧のデータを取る方法がより適切であると考えられた。皮下腫瘍上部の皮膚を、皮下腫瘍表面を傷害せずに除去し先ず腫瘍酸素分圧の測定をOxyspot法および針電極を用いて行った。リポソーム型人工酸素運搬体であるヘモグロビン小胞体(HbV)の経静脈的全身投与により投与約10分後に腫瘍組織酸素分圧が有意に上昇することが認められた。人工酸素運搬体の全身投与により腫瘍の組織酸素分圧上昇が確認された報告は少ない。このため腫瘍血管構築の観察に先立ち、この酸素分圧上昇が治療効果の増強に貢献し得るか否かを検討した。HbV投与後の腫瘍組織酸素分圧上昇のタイミングを考慮し、HbV投与後約5分後から20グレイの照射を行った。その後腫瘍サイズの経時的観察を行った。HbV投与後照射群では照射単独群に比べ有意な発育抑制が見られた。この発育遅延をもたらす機構のさらなる解明が今後の課題と考えられた。
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