2003 Fiscal Year Annual Research Report
冬眠を応用した虚血性臓器障害の予防と再生に関する研究
Project/Area Number |
15790753
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
角田 智彦 関西医科大学, 医学部, 助手 (00319625)
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Keywords | 心筋保護 / 心臓保存 / 冬眠 |
Research Abstract |
心筋保護法の進歩は著しが、長時間におよぶ関心術の成績は未だに不良であり、移植医療では、臓器保存の限界から輸送時間に制約がある。そこで、臓器保護、保存においては、虚血および低温障害を回避する方法が必要であり、根本的な改良が迫られている。冬眠動物は、冬眠期には体温が0℃近くまで低下し、心拍数も活動期の100分の1程度まで減少するが、生体の恒常性は維持されている。これは、冬眠動物の心臓が低温・虚血に対し耐性を獲得していることを意味する。今回我々は、この冬眠現象を長時間の心保存に応用する目的で、冬眠期・非冬眠期のシマリスの摘出心を用いてその低温虚血耐性を比較検討した。 冬眠期(HB)と非冬眠期(NHB)のシマリスの心臓を摘出し、常温下30分の虚血(NTI)もしくは摂氏4℃のUW液中で24時間保存(HTP)した。その後、2時間のLangendorff灌流を行い、左室バルーン法にて左心機能を測定し、TTC染色による心筋梗塞巣を比較した。また、心筋細胞アポトーシスについてはFITC(green)とTRITC(red)の蛍光二重染色を行い、全心筋細胞に対するTUNEL陽性心筋細胞の割合で比較した。 再灌流時の左心機能は、NTI後では両群間に差は無いが、HPT後ではHB群において有意(p<0.05)に良好であった。心筋アポトーシスはNTIでは両群で差がなく、HTPではHB群において有意(p<0.01)に抑制された。HTP再灌流2時間後のHB群の梗塞サイズは、NHBのそれと比較し、有意(p<0.05)に縮小していた。 冬眠期心臓は非冬眠期心臓と比較して、4℃24時間心保存後の、心筋細胞死の抑制と良好な左室機能の回復を認めた。このことから、冬眠現象の応用は、低温下での臓器保護、臓器保存にとって有効な手段となりうることが示唆された。
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