2003 Fiscal Year Annual Research Report
人工呼吸惹起性肺損傷における肺血管内皮細胞内ミオシン軽鎖脱リン酸化に関する検討
Project/Area Number |
15790833
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 信一 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40317251)
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Keywords | 人工呼吸惹起性肺損傷 / 肺血管透過性 / Rho kinase inhibitor |
Research Abstract |
これまでわれわれの研究グループは家兎モデルを用いて、正常肺においても高一回換気量による人工呼吸が肺胞腔内IL-8産生を亢進させ、さらに好中球肺集積を生じることを示した。一回換気量の増大に伴って肺損傷は増加するが、本研究の肺損傷モデル確立にあたり、この肺損傷の程度(肺血管透過性の指標である肺の乾湿重量比増加・気管支肺胞洗浄液と血漿中のアルブミン比増加・肺胞洗浄液中の好中球集積)と、肺胞洗浄液中の好中球エラスターゼ活性が相関していることが示された。一方で、陽圧人工換気を行わない自発呼吸の個体からは好中球エラスターゼ活性は検出されず、人工呼吸惹起性肺損傷の発症病態に好中球エラスターゼが関与していることについて学会報告を行った(アメリカ呼吸器学会2003シアトル)。さらに、これまで敗血症性ショックの後期メディエータと考えられてきたHMGB1が、この病態の発症・進展に関与している可能性について検討している。 この人工呼吸惹起性肺損傷家兎モデルに対し、Rho kinase inhibitorをエアロゾル化して吸入、あるいは血管内投与・腹腔内投与を現在試行している。Rho kinase inhibitorはRho経路を介する細胞骨格収縮を抑制し血管平滑筋を弛緩させる作用を有しており、血圧低下等の副作用を考慮した用量・投与方法の検討および肺損傷への効果の評価を行っている。 また、2型ヒト肺動脈血管内皮細胞の培養を開始し、フレキサーセルを用いた細胞伸展実験を予定している。肺動脈血管内皮細胞のmechanical stretchによるサイトカイン放出・血管透過性亢進に対する、Rho経路を介する細胞骨格収縮の関与をin vitroにおいても示すことができると考えている。
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