2003 Fiscal Year Annual Research Report
受精過程における卵細胞質内での精子の役割、特に精子中心体の機能に関する研究
Project/Area Number |
15790873
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 聡一 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (00343054)
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Keywords | 精子 / 中心体 / 受精 / 不妊症 / 機能評価 |
Research Abstract |
妊孕性のあるボランティアからの精子、また不妊症で体外受精を行う患者で同意のとれたものを採取、凍結保存した。ウシ卵はウシ卵巣を毎週1回程度の割合いで購入し未熟卵を採取、成熟培養を行い、翌日成熟卵のみを選択し実験を行った。まず妊孕性のあるヒト精子が死滅した後に卵内で機能を発現するか否かの実験を行った。結果としては死滅精子はウシ卵内に顕微授精しても核の膨化や微小管の形成を含め、何の変化も起こさないことが確認された。この死滅精子を精子中心体機能不全モデルとし、この機能不全に対する治療として微小管重合剤であるパクリタキセル(Taxol TM)の効果を検証した。死滅精子をウシ卵内に顕微授精後、精子中心体から微小管が形成される6時間目に2mMの濃度で1時間培養、その後卵の固定を行い微小管の発現を観察したところ卵細胞質からの微小管形成は認められたが、精子頚部からの微小管の形成は認められず、パクリタキセル内で30分間の培養でも同じ結果であった。逆に2時間、3時間と培養時間を長くすると卵は変性してしまうことが明らかとなった。このことよりパクリタキセルのみでは精子中心体機能の補助には無効と思われた。そこで精子中心体機能発現の機構として1994年G Schattenらの精子が卵細胞質内に侵入した後、精子頚部のS-S結合が解離、引き続き周辺蛋白のリン酸化がおこり精子頭部から精子頚部が解し精子中心体機能が発現、すなわち微小管の形成が行われるのではないかとする考えに基づき、顕微授精前にS-S結合を解離させるDithiothreitol(DTT)で精子を処理し顕微授精した。さらに顕微授精後6時間で1時間のパクリタキセル処理を卵に行ったところ精子頚部からの微小管形成が確認された。このことよりDTTとパクリタキセルを適切な条件で使用することにより、中心体機能不全による不妊症への治療の可能性が見い出された。
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Research Products
(1 results)