2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15790875
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
五十嵐 秀樹 山形大学, 医学部, 助手 (80333970)
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Keywords | Ca^<2+>オシレーション / 加齢卵 / マウス / ATP |
Research Abstract |
原因不明不妊の一因を卵細胞質の質の低下と考え、マウスの排卵後の加齢卵をその実験モデルとし、以下の研究を行った。 【目的】我々は、排卵後の卵の加齢が、小胞体でのカルシウム(Ca^<2+>)制御能を低下させCa^<2+>オシレーションを変化させること、受精卵の発育異常を惹起すること報告してきた。この一因を加齢卵の細胞質の質の低下、特にミトコンドリアのATP産生能の低下によると仮定し、今回、受精時の細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)と細胞内ATP濃度([ATP]_i)の同時測定を行い,加齢に伴う[ATP]_iの変化を検討した。 【方法】MII期卵は過排卵刺激したB6C3F1雌マウスから採取し、hCG投与14時間後に採取した卵を新鮮卵、20時間後を加齢卵とした。精子はICR雄マウスから採取した。細胞内でATPはマグネシウム(Mg^<2+>)と結合して存在することから、[ATP]_iの変化はMg^<2+>感受性蛍光色素による蛍光法で間接的に、[Ca^<2+>]_iも蛍光法により測定した。これにより新鮮卵および加齢卵の受精時の[Ca^<2+>]_i、[ATP]_iの変化をリアルタイムに同時測定した。また、リアルタイムな測定は不可能だが、量的な変化を確実に測定できるルシフェリン-ルシフェラーゼ法(L/L法)でも受精前後の細胞内ATP量を測定した。 【成績】蛍光法では、新鮮卵では受精時のCa^<2+>オシレーションの開始と共に[ATP]_iが上昇した。加齢卵では[ATP]_iの上昇は新鮮卵に比べ有意に低かった。L/L法では、細胞内ATP量は受精前には新鮮卵、加齢卵で有意差を認めなかった。受精後は新鮮卵、加齢卵共にATP量は増加したが、その増加量は新鮮卵が加齢卵に比べ有意に大きかった。 【結論】マウス卵では受精直後に細胞内ATPの産生亢進が起きることを明らかとした。この亢進は加齢により抑制された。Ca^<2+>オシレーションと細胞内ATP産生のパターンの解析から卵細胞質の評価が可能と考えられる。 以上につき、研究成果を第59回アメリカ生殖医学会(平成15年10月13日)にて口演発表した。
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