2003 Fiscal Year Annual Research Report
明細胞卵巣癌における糖代謝の特性とその転移機構に関する研究
Project/Area Number |
15790904
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
松本 佳也 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (30360043)
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Keywords | 糖代謝 / 明細胞癌 / 卵巣癌 / 血管新生 |
Research Abstract |
上皮性卵巣癌のうち明細胞癌は予後の悪い組織型で、特徴的な臨床像の一つとして深部静脈血栓症があげられる。またシスプラチンを用いた化学療法の副作用としても血栓症があり、これも上皮性卵巣癌特に明細胞癌では高い確率でおきることが知られている。しかしながら臨床データは海外の文献が多く、自験例での臨床的な背景と血栓症についての研究を行った。まずは、発生率の変遷と血栓症の頻度の調査を行い、経過中に血栓症をきたした症例について特徴的な臨床所見を発症前に捉えることができないかを検討した。明細胞癌の発生率はこの13年間にも上昇を続け、現在では20%以上を占めるようになっていた。全症例42例のうち血栓症をきたした症例は静脈血栓症2例、動脈血栓症2例であった。静脈血栓症と動脈血栓症はその発生機序及び発生部位に大きな違いがあり、すべての症例で血栓症の発生に腫瘍による影響があるとはいえないが、深部静脈血栓症の発症では左側で原発腫瘍の大きいもの、CRP、FDPの高い症例、動脈血栓症の発症では脳梗塞と糖尿病、左側でFDPの高い症例及び既往歴家族歴に留意する必要があることが示唆された。 次にこの腫瘍のグリコゲンとその分解産物および糖新生や解糖系におけるそれそれの物質が、血栓形成および腫瘍増殖、腫瘍血管新生、転移浸潤に与える影響について研究するために、腫瘍内への糖の取り込みから順を追って研究するための予備実験として、まず手術標本の凍結切片及びパラッフィン包埋切片を使用し、免疫組織化学的にGLUT1の発現について検討した。凍結切片とパラッフィン包埋切片ではその染色態度に差はなく、腫瘍細胞に発現が見られた。凍結切片ではwestern blotでも確認された。腫瘍内への糖の取り込みについて培養細胞を使って実験中である。
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