2005 Fiscal Year Annual Research Report
GPIアンカー切断を介した細胞内情報伝達系と癌化の関連に関する研究
Project/Area Number |
15790917
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
辻岡 寛 福岡大学, 医学部, 助手 (90352252)
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Keywords | GPI-PLD / 癌胎児性抗原(CEA) |
Research Abstract |
本実験ではGPIアンカー型タンパクである胎児性癌抗原(CEA)を発現している細胞にGPI-PLDを遺伝子導入することにより、CEAの分泌がどう変化するかを解析することが必要となるが、transfectionに際し、lipofectin、lipofectoaminといった試薬では細胞毒性が強く、良好な遺伝子導入効率が得られなかった。最終的にはFuGENEにより、約30%の遺伝子導入効率が得られることがわかった。この事実に基づき、その後の遺伝子導入はFuGENEを用いて行った。CEAの培養上清中への分泌を認めることが知られているヒト消化器癌由来のLoVo細胞は、実際には、CEAの分泌量が細胞によってまちまちであるため、これをクローニングし、3つのクローンを得た。このうちの2クローンはCEAの培養上清中への分泌を認めず、1クローンのみが高率にCEAの分泌をしていることがわかった。このCEA分泌株をLoVo-1とし、以下の実験に使用した。(1)未処理細胞(control)、(2)GPI-PLD/pSG5導入細胞(I)、(3)GPI-PLD/pSG5導入細胞(II)、(4)pEGFP導入細胞(mock)の培養上清中へのCEAの分泌をELISA法により検出した。(1)および(4)の細胞に比し、GPI-PLDを発現した(2)、(3)の細胞で有意にCEA分泌量が増加した。この際、(2)、(3)の培養上清中にGPI-PLDが発現していることは、immuno-blotting法にて確認している。同様の手法を用いて、発現ベクターを変更してGPI-PLDを導入したところ、再現性をもってCEAの分泌亢進を認めた。このことより、GPI-PLDがCEAの遊離、分泌に関わることが示唆された。しかしながら、野生型のLoVo-1細胞では定常量のCEA分泌を認めており、しかも培養上清中にGPI-PLDの発現を認めなかった。この事実は、GPI-PLDがすべてのCEA分泌に関わっているわけではないことを示唆するものとなった。LoVo細胞の中にはCEAの発現はあるものの、分泌しないクローンが存在するのではないかと考えられる。そのような性格の細胞にGPI-PLDを発現させた場合はCEAの分泌が認められるものと思われるが、現時点でクローニングできていない。またGPI-PLDの定常発現株の作成に成功したが、これらの細胞では明らかに細胞接着に障害を来しており、しかも細胞死におちいるものが多いという現象を認めた。GPIアンカー型タンパクの遊離がこのような現象を引き起こしているものと思われ、切断されるタンパクの同定を行っているが、現時点では同定できていない。
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