2004 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病黄斑浮腫のメカニズムの解明と治療薬の開発(血液網膜柵外方透過性及び眼内酸素検査による検討)
Project/Area Number |
15790970
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
森 文彦 旭川医科大学, 医学部, 講師 (90322916)
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 黄斑浮腫 / 脈絡膜血流量 / OCT |
Research Abstract |
脈絡膜循環は網膜外層の酸素を供給し、黄斑部中心窩領域には網膜血管がない。また、糖尿病患者において網膜症発症前から中心窩脈絡毛細血管板の血流量は低下している。これらより、糖尿病患者における黄斑部の脈絡膜循環の障害は、糖尿病黄斑浮腫の病態に関与している可能性がある。そこで、糖尿病黄斑浮腫において、Laser Doppler flowmetry(LDF)を用いて中心窩脈絡毛細血管板の血流量を評価した。Control群:36眼、NDR群:33眼、NPDR,(黄斑浮腫有り(ME+)群:17眼、NPDR, ME-群:20眼を対象とした。その結果、中心窩脈絡毛細血管板血流量はControl群で13.5±4.9 arbitary units、NDR群で9.4±2.5 arbitary units、NPDR(ME-)群で10.8±4.8 arbitary unitsで、正常者に比べて糖尿病患者で有意に低下した。また、NPDR,(ME+)群で5.6±2.0 arbitary unitsと有意に低下していた。したがって、糖尿病黄斑浮腫において、中心窩脈絡毛細血管板血流量は低下することが明らかとなった。 眼循環と並んで糖尿病網膜症の病態メカニズムに大きく関与している機能として眼のバリアー機能がある。特に糖尿病患者において血液網膜柵透過性機能は評価されてきた。血液網膜柵透過性機能検査の1つであるvitreous fluorophotometryは、蛍光色素を投与し、網膜血管内皮あるいは網膜色素上皮に存在する血液網膜柵を通って硝子体内に透過するfluorescein-Naの蛍光強度を定量することで柵の機能を評価する方法である。血液網膜柵透過性機能には、網膜から硝子体へ向かう方向の内方透過性機能と硝子体から網膜へ向かうactive transportを有する外方透過性機能がある。これまで糖尿病網膜症の血液網膜柵内方透過性機能に関する報告はあったが、血液網膜柵外方透過性機能に関するものはほとんどなく、その簡便な評価方法もなかった。我々は、differential vitreous fluorophotometry(DVF)から算出されるfluorescein(F)/fluorescein monoglucuronide(FG)比が簡便なPoutの指標であることを報告した。F/FG比の増加は血液網膜柵外方透過性機能(active transport)の低下を意味する。そこで、糖尿病黄斑浮腫患者における血液網膜柵外方透過性機能を評価した。 Control群:7眼NPDR,ME-群:5眼NPDR,ME+群:6眼にDVFをおこなった。その結果、F/FG比はControl群で0.42±0.32、NPDR,ME-群で0.50±0.34、NPDR,ME+群で、2.84±1.20とNPDR,ME+群で有意に高かった。したがって、糖尿病黄斑浮腫患者において血液網膜柵外方透過性機能は障害されていることが示唆された。 以上より、糖尿病黄斑浮腫の発症のメカニズムについて次のようなことが考えられる。糖尿病になると中心窩脈絡毛細血管板血流量が低下し、そのことにより低酸素となり、VEGFなどの血管新生因子が増加する。それにより、血液網膜柵内方及び外方透過性機能が障害され、黄斑浮腫を生じる。糖尿病黄斑浮腫において、中心窩脈絡毛細血管板の血流量は低下し、血液網膜柵の内方及び外方透過性機能も障害されていることが示唆された。
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Research Products
(3 results)