2003 Fiscal Year Annual Research Report
マウス切歯の伸長に働く増殖因子の解析-歯牙再生の臨床応用に向けて-
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15791064
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
網田 陽子 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教務職員 (70274850)
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Keywords | eNOS / エナメル芽細胞 / Apical bud / ニトロ化チロシン / 力学的負荷 / 一酸化窒素 / 切歯 / 組織幹細胞 |
Research Abstract |
マウス12日胚よりtotal RNAを抽出し、hepatocyte growth factor(HGF)とHGF受容体として知られるc-metに特異的なプライマーを用いてreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)によりそれぞれの遺伝子のcDNAを得た。得られたcDNAをプラスミドにligationした後、クローニングし、T7 RNA polymeraseを用いてdigoxygenin(DIG)標識のRNAプローブを作製した。成獣の歯牙の再生を解明するという観点から5月齢のマウスの下顎を凍結して切片を作製し、RNAプローブを用いて、HGFとc-metの両遺伝子についてin situ hybridization法を行った。すると、apical budに近いエナメル芽細胞でc-metの発現が多少、確認されたものの、apical budにおけるHGFとc-metの発現分布を明瞭にするには至らなかった。 ここで、大きく視点を変え、Apical budのエナメル上皮は力学的負荷を得ながらも伸長しつづける事に着目し、力学的負荷による骨形成の主役であるendotherial nitric oxide synthease(eNOS)について検討する事とした。5月齢マウスの下顎の組織切片を作製し、抗eNOS抗体を用いて免疫染色を行った。組織切片の作成法を検討した結果、下顎組織片を10%中性ホルムアルデヒド溶液で固定した後、パラフィン切片を作製し、抗体と反応させる前にコラゲナーゼ処理を施す事で、バックグラウンドの低い最適な染色像が得られた。その結果、切歯部のエナメル芽細胞にeNOSの発現が確認された。そこで、エナメル芽細胞に発現しているeNOSに活性があるのかどうかを、ニトロ化チロシンを指標に検討する事とした。ニトロ化チロシンはeNOSによって生成する一酸化窒素がタンパク質中のチロシンと反応して生成する。マウス下顎の凍結切片を、抗ニトロ化チロシン抗体で免疫染色を行ったところ、eNOSとほぼ同じ部位にニトロ化チロシンが確認された。 本年度までの研究は、歯牙の組織幹細胞がeNOSによって活性化されている可能性を示唆しており、次年度以降の研究に期待が持てる結果となった。
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