2004 Fiscal Year Annual Research Report
マウス切歯の伸長に働く増殖因子の解析-歯牙再生の臨床応用に向けて-
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15791064
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
網田 陽子 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教務職員 (70274850)
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Keywords | Apical bud / エナメル芽細胞 / 切歯 / PI3キナーゼ / Akt / アポトーシス / eNOS / ニトロ化チロシン |
Research Abstract |
マウス胎仔下顎骨より切歯歯胚を摘出し、コラゲナーゼ処理により上皮と間葉に分離した後、apical budを切断し、エナメル芽細胞を得た。Apical bud由来のエナメル芽細胞は単独で培養するよりも、周辺の間葉系細胞とともに培養した方が細胞の継代が安定していた。これまでの報告から、単独培養ではアポトーシスが誘導されている可能性が考えられたので、生存シグナル分子であるPI3キナーゼの下流分子であるAktのリン酸化レベルをウエスタンブロット法で確認した。すると、Aktリン酸化レベルは明らかに共培養系で上昇するという結果を得た。さらに、抗アポトーシス作用を持つ蛋白質のうち、Bcl-2のmRNAレベルが共培養系で上昇していた。そこで、PI3キナーゼの特異的阻害剤であるwortmaninnおよびLY294002を共培養系の培養上清に添加して、その影響を検証した。すると、apical bud由来のエナメル芽細胞のアポトーシスは著しく促進され、Aktのリン酸化レベルとBcl-2mRNAレベルは著明に低下した。これらの結果は、間葉系由来のシグナル(細胞接触もしくは増殖因子)がPI3キナーゼを活性化し、Bcl-2発現上昇によってアポトーシスを抑制する事を示唆している。 前年度に、マウスの切歯の周辺において、endotherial nitric oxide synthease (eNOS)とニトロ化チロシン(eNOSにより生成したNOが蛋白質と反応して生じたと考えられる)の発現を免疫組織染色により確認しており、apical budの幹細胞がeNOSによって活性化されている可能性を示唆している事を報告した。今後、apical budにおけるeNOSとPI3キナーゼを介した抗アポトーシス作用の関係を検証していく必要がある。
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