Research Abstract |
線維結合コラーゲン(FACITs)は,コラーゲン線維配列の調整や架橋形成などを司るコラーゲンであり,そのなかでもIX, XII, XIV型コラーゲンは軟骨に存在することが確認されている.これらFACITsは,軟骨の主要な細胞外基質タンパクであるII型コラーゲンとアグリカンをつなぐ分子であるとされていることから,軟骨の物性に関わる分子である可能性が考えられている.そこで本年度は,比較的機能がわかっているIX型コラーゲンに着目し,変形性顎関節症モデルマウス(SAMP8)とそのコントロールマウス(SAMR1)を用いて、変形性顎関節症発症後では,FACITsは軟骨内でどのように局在するのか,免疫組織学的に検討を行なった. 膝関節では,IX型コラーゲンは,II型コラーゲンと同様に,軟骨の細胞外基質に分布していた.これは,FACITsがII型コラーゲンの周囲を覆うように存在するというこれまでの報告を考えると,妥当な所見と思われるが,意外なことに顎関節では,IX型コラーゲンは,II型コラーゲンとまったく異なっており,軟骨細胞の周囲のみに観察された.このことから,膝関節と顎関節とでは,IX型コラーゲンの機能が異なっている可能性が推測できる.また,変形性顎関節症を発症し,軟骨表層の亀裂周囲の不規則に並んだ軟骨細胞の周囲に強い局在が観察された.このことから,軟骨の破壊もしくは修復とに,IX型コラーゲンが関係している可能性が示唆された.今後,これらのタンパクを、どの細胞が産生しているのか,またリモデリングに関して,MMP, TIMPとの関連はどうか,若年ではどうなのか,検討していく予定である.
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